CL準々決勝「アーセナル対ユベントス」第1戦 雑感  「2つの戦術の併用」が最先端!?

■バルセロナと同様に対戦相手によって「2つの戦術」を駆使してCLを戦い、結果を残しているチーム!?

つまりチェルシーとバルセロナの融合である。引いたプレッシングとカウンター、前方でのプレッシングとポゼッション。2つの戦術を局面に応じて完璧に使いこなすこと。Number628号「速攻と保持。双子の戦術進化論」西部謙司
http://doroguba.at.webry.info/200505/article_19.html

上は昨年の5月にも引用させていただいたNumberでの西野謙司氏の文章。氏が言う「2つの戦術を局面に応じて使いこなすこと」が、まさに最先端のサッカーと言えるのかもしれませんが、今シーズンはその前段階といいますか「試合中の局面での使いこなし」でなく「対戦相手によって戦術を変えて戦う」ことができるサッカースタイルが先端なのかもしれません。例えばバルセロナ。CLチェルシー戦では、ある程度守備を重視した戦いを展開して見事に勝利を納めたわけですが、昨シーズンまでの「対戦相手がどこであろうと攻撃的なスタイルを貫く」スタイルを変えて戦っていたのは記憶に新しいところ。で、そんなバルセロナと同様に対戦相手によって「2つの戦術」を駆使してCLを戦い、見事に結果を残しているチームがあります。そのチームとは、アーセナル。

もともと「カウンター攻撃」も得意としていたアーセナルですが、基本的にはその華麗なるパス回しを信条とした「攻撃的なポゼッションサッカー」が代名詞。相手がどこであろうと、自分たちの「攻撃的で美しい」サッカーを貫くのがベンゲル監督のアーセナルでのサッカースタイルと思っていたのですが、今シーズンのアーセナルの試合を何試合か見る限り、そのスタイルに変化が生じているように感じたんですよね。

■興味があったのは、アーセナルが強豪ユベントスに対してどういう戦術で挑むか!?

ってわけで前置きが長くなりましたが、CL準々決勝「アーセナル対ユベントス戦」について。今シーズン、アーセナルからユベントスへ移籍した「ビエラとの因縁対決」が注目を集めてましたが、それ以上に個人的に興味があったのは、アーセナルが強豪ユベントスに対してどういう戦術で挑むかでした。

CLレアルマドリード戦ではお馴染みの「4-4-2」から中盤を厚くした「4-5-1」システムに変更し、中盤のプレッシング守備からの「カウンター攻撃」で勝利を納めたアーセナル。このユベントスでも同様の戦術で臨んできました。ベンゲルの狙いは「中盤のプレスから奪ってカウンター」? 中盤を厚くして、ある程度、守備を意識しつつゴールを狙うというプランだったのでしょうか?

試合内容に関しては。
「ディフェンス面でとてもいいプレイができた。望み通りのプレイをし、2点を奪い、相手にはほとんど自由にさせなかった。まだやるべきことは多いが、上々のスタートだ」http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/headlines/20060329-00000019-spnavi-spo.html

上は試合後のベンゲルのコメントですが、「ディフェンス」という言葉が出ているのが印象的です。で、その言葉どおり試合開始から「中盤での激しいプレッシング守備合戦」を展開することになります。

■前半①:立ち上がりはユベントスペース!? 中盤でのプレス合戦で幕を開けますが…

前半立ち上がりはユベントスペースと言う感じだったでしょうか? アーセナルの中盤のパス回しを厳しいプレッシング守備から何度もインターセプトしていたんですが、それも15分くらいまで? 次第にアーセナルが左サイドを中心に「ポゼッション」できるようになります。レジェスのドリブル突破から何度かチャンスを演出するのですが、この日のアーセナルの左サイド・レジェスは「攻撃のキーマン」でした。そのドリブルで抜け出せはしないものの、何度かゴール前でファウルをもらいFKのチャンスをもらうことになります。ですがカンナバーロ&テュラムを中心としたユベントスのDF陣は固く、アーセナル攻撃陣に決定的なチャンスを作らせません。ですが、迎えた前半40分にアーセナルが先制点を奪うことになります。

■前半②:先制点はアーセナル!? セスクの「オフザボールの動き」は見事でしたが…ビエラのプレイは…

契機は、ユベントスのMFビエラのドリブル突破をアーセナルのピレスがスライディングでインターセプトしたことでした。ボールを奪ったピレスがそのままドリブルでボールを運び、前線のアンリへパス。パスを受けたアンリが前線で「ため」て、後方から走りこんできたセスクファブレガスへスル-パス。これが見事に通り、ボールを受けたセスクがユーベのDF(テュラム?)が詰めるものの構わずシュート。このシュートが股間を抜けてグラウンダーでゴールに突き刺さります。さすがのブッフォンも一歩も動けず。ゴール内に転がるボールを唖然と見つめるだけでした…。

「中盤で奪って、カウンターからゴール」

アーセナルの狙い通りのゴールであったと思うのですが、決めたセスクの「動き」がすばらしかったです。ワントップの場合、ゴールを奪うには「2列目からの飛び出し」がポイントとなるわけですが、それを忠実に実行したセスクの「オフザボールの動き」がすばらしかったのは言うまでもないでしょう。以前ミランのアンチェティ監督が「3ハーフは4-4-2対策として効果的」と言っていたわけですが、要は「相手のダブルボランチに対して3人の中盤で臨んで中盤で数的有利な状況を作る」という利点を述べてました(ワールドサッカーマガジンにて)。で、その「3ハーフの有利性」が、この試合というか、この「ゴールシーン」でモロに出た気がした次第です。


【アーセナル、ユベントスの中盤の単純な人数比較】
                       ○ジルベウトシウバ
   ○フレブ     ○セスク             ○ピレス    ○レジェス
                
   ●ムトゥ        ●エメルソン     ●ビエラ     ●カモラネージ

何故にあのゴールシーンでセスクがゴール前に飛び出せたのか? それはもう1人のMF「ピレス」がビエラからボールを奪ったからであり、要は「3ハーフ」でユベントスの「エメルソン&ビエラ」のMFに対して数的有利な状況にあり、セスクが「フリーで飛び出せる」状況を作りやすかったからであると。もちろん中盤を「3人」にしたぶん、FWがアンリ1人となってしまわけでアンリに負担がかかるのは言うまでもないのですが、「ワントップ」でできる仕事=ここでは2列目&3列目の飛び出しを可能にする仕事=を大事な場面できっちりとこなしたアンリのプレイにも賞賛を送るべきでしょう。一方、失点したユベントスの守備についてですが、ボールを奪われたビエラのプレイは軽率であったと思いました。何故にあそこでドリブルしたのか? 確かにユベントスの攻撃は機能してなく、ゴールを奪うにはどこかで「リスクを覚悟でチャレンジすること」が必要であったと思うのですが、それをあの時間帯にあの位置で行うのが正解であったのでしょうか? そもそもこの試合、ユベントス&カペッロは「リスク承知でゴールを奪いにいく」考えだったんでしょうか? 失点するまでは得意のリアクションサッカーで「リスクを冒さないサッカー」を展開していたわけで、それを最後まで続けることができればOKであったと思うんですが…。そのあたりのカペッロの狙い、ビエラの考えは気になるところです。(ちなみにカペッロが4-4-2を採用する理由は、一般的なシステムで誰が入っても順応しやすいからと言っていたような。その考えは、それはそれで正しい。)

■後半①:ユベントスが反撃に出ますが、ネドベド不在は痛かった!?

後半。ユベントスはゴールを狙いにいきます。とはいっても、この日のユベントスは「攻め手」がありませんでした。まぁ、そもそも「ポゼッション」からの攻撃を得意としてないユベントスなわけで、基本的には放り込みから「2トップのポストプレイ」からサイドに展開してセンタリングに合わせるパターンが主な攻撃パターン。ズラタンが前線で「ポストプレイできるかどうか」が攻撃のキモなんですが、この日のズラタンはイマイチでした。アーセナルDF陣に苦労して、ほとんど基点が作れなかったんですよね。後半は主に右サイドに流れて「アーセナルの急造SBフラミニの裏」を意図的に狙っていたように見えましたが、センデロスにきっちりと対応されてしまいます。うーーん。やはりネドベドの不在が痛かったというところでしょうか? ユベントスは2列目にネドベドがいるかいないかでは「まったく別のチーム」になってしまうことがあるんですよね。ネドベドがサイドで基点となり、縦や中央へドリブルを仕掛けたり、2トップと絡むことで「ユベントスの遅攻」が機能すると思っているのですが、この日、そのネドベドに変わって出場したムトゥはユベントスの攻撃に「変化」を与えることはできませんでした。ちなみにムトゥと言えば元チェルシーの選手なわけですが、チェルシー在籍1年目(ラニエリの時)のパワフル&スピーディなプレイはもう期待できないんでしょうかね? ドラック問題でチェルシーを首になり、ユベントスで復活したルーマニア代表のエースですが、この試合で輝くことはできませんでした。輝けなかったと言えば逆サイドのカモラネージも同様。もしかしたらユベントスの選手はコンディション的に問題を抱えていたのかもしれません。

■後半②:アーセナルがカウンターからアンリが決めて勝負あり!?

って、感じでユベントスが攻めに出るも機能せず、逆にアーセナルがカウンターから何度も決定的なチャンスを迎えるという展開で試合が展開。そして迎えた後半24分にアーセナルが追加点を奪います。右サイドでフレブ、アンリ、セスクとつないで、最後はアンリがゴール前で、フリーでシュート試合を決める決定的な2点目が決まります。ここでもセスクの「飛び出し」が利いてました。この試合セスクがフリーとなるシーンが何度もあったんですが、ユベントスDF陣は最後まで「セスクへの対応」を修正することができなかったのは次戦に向けての大きな課題となることでしょう。そうそう、この2点目に絡んだフレブですが、正直、前半で交代かって思うくらい「出来が悪かった」ように思えました。結果として2点目につながったわけで、我慢して使い続けたベンゲルの采配がよかったということなのかもしれませんが、アーセナル攻撃陣の「穴」に見えたのは私だけでしょうか? ってわけで、試合はそのまま2-0で終了。後半途中にカモラネージとゼビナの2人が退場となるおまけ付きでアーセナルが完勝するわけですが、カペッロにとっては「信じられないような痛い敗戦」だったと思う次第です。

■総括:「2つの戦術」を駆使するアーセナルは強い!? 問題はあるけど

「選手たちには少し話をするつもりだ。試合の終了間際になっても追いつける可能性はあるが、数的不利になるとそれも難しくなる。とはいえ、ゼビナの2枚目のカードはやや厳しすぎるように思えた。
 前半は互角の展開だったが、十分に避けられたはずの先制点を許してしまった。2点目にも同じことが言える。厳しい結果だが、まずは(土曜日の)トレビーゾ戦のことを考え、それから第2戦のことを考えよう。私は信じている。それはいつも通りだ。アーセナルは今非常にいいサッカーをしている。われわれにも2、3回のシュートチャンスがあったが、試合結果は妥当なものだ」http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/headlines/20060329-00000018-spnavi-spo.html

結果は妥当とカペッロが言ってますが、その通りだと思いました。アーセナルが直前のリーグ戦が延期となりコンディション的に有利であったところもあったと思いましたが、この日の結果はそれだけが原因ではなかったと思う次第です。まぁまだ第1戦が終わっただけ。第2戦が残っているので勝負はわかりませんが、アーセナルが有利となったのは間違いないでしょう。ユベントス的には攻撃のキーマンである「ネドベドの復帰」がポイントとなりそうですが、今シーズンの「現実的な戦い方をする」アーセナルから2ゴールを奪うのは簡単なことでないのは確かでしょう。

「華麗なるポゼッションサッカー」と「現実的なカウンターサッカー」

この2つの戦い方を併せ持つ今シーズンのアーセナルは、モウリーニョがかつてアーセナルを称して言った「ヨーロッパで勝てないスタイル」とはひと味違う気がしてます。ベンゲルがモウリーニョやベンゲルの影響を受けたのかどうかはわかりませんが、バルセロナと同じく「2つの戦術」を駆使するアーセナルのこの試合の勝利は、けっして「偶然」ではないように思うわけです。問題は「若さ」と「リーグ戦の4位争い」なわけですが、それらを含めて今後のアーセナルがどのような戦いを展開していくのかは注目です。まぁ昨シーズンのリバプールみたいな奇跡は起こらないとは思いますが…。
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