CL準決勝「バルセロナ対ミラン」第2戦  「ロナウジーニョ」を巡る攻防と、2つのシステム

■第2戦の私的なポイントは、「ロナウジーニョ対スタム」という攻防!!

なおこの4-1-4-1で中央にいるロナウジーニョは基本的に守備はしない(笑)。ミランが両サイドから攻撃を仕掛けてくるため、しっかり敵のSBをチェイシングできるイニエスタとエトオを開かせておけば、守備をしないロナウジーニョをピッチ上に残しつつ、最大限の守備の安定を図ることができる。
 組織に属した途端に輝きを失うロナウジーニョは普段から基本的に守備を免除されている。この日の対面はスタムだったが、51分にスタムがフリーで上がったところから決定機を作られており、負担をかけている場面もあるだろう。しかし、スタムが積極的に上がればロナウジーニョにそこを突かれる可能性も高くなる。また相手が攻撃的な右SBを置けば、ロナウジーニョへの対処で問題が生じる。つまり相手がバルサの弱点を突いてくると自動的にバルサの長所が浮かび上がるわけで、そこにロナウジーニョを配置する許容性が生まれる、といった具合になっている。http://blog.livedoor.jp/znet/archives/50802439.html

上はおなじみz-netさんのブログから引用させていただきました。こちらでは、第1戦ついて書かれていたわけですが、第2戦での私的なポイントはまさにこの「ロナウジーニョ対スタム」であったと思いました。Z-netさんが書かれているように「相手がバルサの弱点を突いてくると自動的にバルサの長所が浮かび上がる」わけですが、この試合でも右SBスタムがフリーで上がって攻撃参加する場面が何度か見られ、そこがミランの攻撃の「狙い」だったように見えたんですよね。

■後半にアンチェロッティが「リスク覚悟」でロナウジーニョのところを仕掛けた!?

ミランは後半早々からガットゥーゾとセードルフのポジションを左右に入れ替えていたように見えました。たぶんロナウジーニョは怖いけど「彼の守備は弱点」と考えて、アンテロッティが「リスクを承知」で勝負に出たってことだと勝手に思っているのですが、その狙い通りにMFセードルフ&SBスタムがチャンスメイクすることになります。まず後半55分過ぎにセードルフがアーリークロスを右サイドから上げてシェフチェンコがダイビングヘッド! GKバルデスの好守に阻まれるものの、ゴールを予感させる「形」でした。続く58分。今度はセードルフが右サイド・ハーフウェイラインあたりでボールをキープすると、ピルロが中央にぽっかり空いたスペースへ上がってフリーでパスを受けます。そこから左サイドに流れていたカカへのパスはうまく合いませんでしたが、再びボールを回してゲームを作り直します。そこからMFピルロ、左SBセルジーニョらを経由して「フリー」となっていた右SBスタムまでパスが渡りゴール中央へセンタリング。このセンタリングをインザーギがシュートしますが惜しくも枠を捉えずチャンスを逸しますが、両SBを高い位置に張って展開した「ボールポゼッションからの攻撃」は、まるでバルセロナのお株を奪うような見事なものであったと思いました。


【ミランのポゼッション時のポジションニング】
             FW○シェフチェンコ   FW○インザーギ
      MF○カカ                      
                        
                        MF○ピルロ
                                          SB○スタム(フリー)                                             ↑
 SB○セルジーニョ     MF○ガットゥーゾ  MF○セードルフ      ↑
              
                  CB○カラーゼ   CB○コスタクルタ
                        
                                          WG●ロナウジーニョ

適当に図にすると上のような感じですが、要はミランが「ボールポゼッション」できるとSBスタムの対応ににバルセロナDFが四苦八苦するわけです。先程、述べたように、基本的にロナウジーニョは守備しませんからね。で、ミランとしてはこの「フリー」のスタムをうまく使ってチャンスメイクしたかったわけですが、残念ながら今のスタムの攻撃力はバルセロナゴールを脅かすほどのものではありませんでした。

■スタムをフリーにして問題なし!? ロナウジーニョは「弱点」でなく、あくまで「強点」という考え方!

さて一方、バルセロナ側から考えて見ますと、ロナウジーニョは「守備の弱点」ではありましたが、それを補ってお釣りが出るくらいの「強点」であるわけです。中央に絞ってトップ下の位置から仕掛けたり、お馴染み左サイドから仕掛けたりと、ミランにとって最も危険な存在でありました。スタムを何度かフリーにしてはいましたが、そのお返しとばかりに(?)ミランゴールを脅かすことになります。まず後半53分に中央でボールをキープして右サイドのDFセードルフの裏へスルーパス。ジュリをうまく使ってDFの裏のスペースを突き、完全に裏をとったジュリがシュート性のセンタリングを入れます。このセンタリングが、流れの中からゴール前に上がっていたベレッチの元へ。タイミングが惜しくも合わずゴールなりませんでしたが、ロナウジーニョの「個人技」からの仕掛けは、ミランDFを崩していました。さらに後半60分、今度はカウンターでエトーが抜け出し、左サイドで待つロナウジーニョの元へ。パスを受けたロナウジーニョが、そのまま「ためて」センタリング。ボールはセルジーニョをうまく越えてジュリの元へ届きましたが、第1戦のようなボレーシュートを決めることは出来ませんでした。


【バルセロナのサイドからの攻撃パターン】
                                    
                                    ↑
           DF      DF      DF     DF  ●ジュリ
    ●ロナウジーニョ(センタリング)                 


ちなみにこの攻撃の形はバルセロナが得意するもので、ペナルティエリアの角から低い弾道でセンタリングを逆サイドに入れて、DFの後ろの「死角」からウイングなりFWなりが飛び込んでシュートというもの。スタンフォードブリッジでチェルシーがやられた「形」はまさにコレでしたが、この試合ではバルセロナのシュートに精度がありませんでした。

というわけでミランとバルセロナが「ロナウジーニョ」という弱点と強点を巡って「リスクを覚悟の攻撃合戦」を繰り広げるていたわけですが、その白熱の展開も後半64分を堺に変化します。

■カフー投入! ミランにとって「勝負」というメッセージは、バルサにとって…!?

仕掛けたのはミランでした。CBコスタクルタに変えてカフーを投入。「キーマン」スタムをCBに移動させ、新たな攻撃のキーマンとしてSB「カフー」に賭けます。コンディションに不安があるものの、ブラジル代表であるSBカフーの攻撃力はスタムよりも上。ノーマークのフリーな状態からなら良質なセンタリングが上がる可能性は大ですし、当然、ゴールの可能性も高くなるわけです。コンディションや守備力に不安はあるもののゴールを奪わないと「敗戦」が決まるアンチェロッティは、ここでさらなる勝負に出ます。で、そのカフー投入を受けてバルセロナも動きます。冒頭で紹介した「ロナウジーニョのワントップ」んも4-1-4-1へシステムチェンジ。カフーのマークにはFWから左サイドに移ったエトーがつくことになります。


【バルセロナの4-1-4-1】

 ○ベレッチ        ○マルケス     ○プジョール      ○ジオ

                  ○エジミウソン

 ○ジュリ        ○デコ(?)     ○イニエスタ(?)    ○エトー   
  

                  ○ロナウジーニョ

第1戦で1点リードしているバルセロナにとっては、この時間帯からセオリー通り守備固め? 「ロナウジーニョの守備の弱点」をカフーに突かれるよりも「4-1-4-1」に変えてからカウンターでロナウジーニョを生かすほうが勝機が高いという判断でしょう。でそのライカールトの判断は正しかった。「4-1-4-1」に変えて守備のバランスがよくなったバルセロナは中盤でのプレッシングが利くようになりミランに傾きかけていた流れを引き寄せます。インターセプトからカウンターで何度かロナウジーニョが決定的な場面を作ることになります。ゴールはなりませんでしたが、ゲームの流れは完全にバルセロナへ。その後、ミランはルイコスタ、ジラルディーノを投入しますが結局ゴールできず、バルセロナが見事にCLファイナルへ進むこととなります。

個人的にはライカールトの「4-1-4-1」へ変更するタイミングが絶妙であったと思っているのですが、たぶん事前にそれを投入するタイミングをいくつか考えていたんでしょう。リードしたままで残り何分くらいの状況なら「4-1-4-1」みたいな感じ? まぁ「4-3-3」から「4-1-4-1」への変更で「選手自体は変えてはいない」ので、もしゴールされたらまた「4-3-3」に戻すだけなのかもしれません。

■「4-3-3」と「4-1-4-1」という、ポゼッション向き&カウンター向きシステムを併用できるバルサは強い!

このロナウジーニョのポジションを動かして、ポゼッション的な「4-3-3」にも、カウンター的な「4-1-4-1」へのどちらへも試合中に臨機応変に対応できるバルセロナのシステムは秀逸。個人的には、この「ポゼッション」と「カウンター」を選手交代なし併用できるシステムというのは現代サッカーでは最高峰のものであると思います。そして、それを可能にしているのは「ロナウジーニョ」というウイングもFWもできるファンタジスタと、「エトー」というFWながらサイドの守備が出来る選手がいるからだと思うわけです。

■ミランについて:シェフチェンコの「幻のゴール」は気の毒だと思いました。「SBの裏のスペース」をもっと突ければ!?

さて惜しくも敗戦してしまったミランですが、シェフチェンコの「幻のゴール」は気の毒に感じました。私が見た感じではノーファウルであったと思いましし、もしあのゴールが決まっていれば試合の行方はわからなかったかもしれません。第1戦の時に酷評したDF陣ですが、危ないシーンはあったもののよく無失点で押さえたと思いました。カラーゼもよくやっていたと思いますが、このまま来期もミランのCBを務めるのでしょうか? あと前半早々にカウンターからカカがSBジオの裏をついてシュートを打ったシーンがあったのですが、このような得意の「カカ、シェフチェンコ、インザーギ」の3人によるカウンター攻撃が炸裂できなかったのは悔やまれるところでしょう。もっとも今シーズンのバルセロナのDF陣は「カウンター対策」がばっちりで、MFエジミウソンやDFマルケス、プジョールがすばらしい守備を展開していたわけですが、チェルシー戦よりは「SBの裏のスペース」が空いていた時間帯があったのは確かなわけで、ここを突けなかったのが痛かったのかなぁと。まぁチェルシーと比較していえば「トップ下でボールが持てる」カカの存在が光っており、スタムの攻撃参加からの「ポゼッションサッカー」を可能にしていたのは間違いなく彼の存在があったからであると思った次第です。チェルシーにもしカカ(みたいな選手)がいたら、もっと「ロナウジーニョの裏」をつけたかもしれないのになぁなんて思ったりして(笑)。まぁつけたとしても、それをゴールに演出することが出来る攻撃的SBがいないんですけどね。

■気の早い話ですが、CLファイナルの展望とか書いたりして!?

というわけで「ロナウジーニョを巡る攻防」を中心にお届けした今回。ここで気の早い話ですがパリで行われるCLファイナルのことについて言及させていただきますと、勝負のカギはこれまた「ロナウジーニョを巡る攻防」になる気がするわけです。アーセナルのSBエブエ対バルセロナのロナウジーニョの攻防がポイントになるのではないかと。たぶん主導権はロナウジーニョが握るんでしょうが、試合中に何度かはエブエが「フリー」で攻撃参加できる場面が出てくると思うんです。そのサイドの攻防が、まんま勝敗のカギを握る気がするんですが…!?って、まだまだ先の話ですね。とりあえずはファイナル進出おめでとうバルセロナってことで。来シーズンはチェルシーも負けませんよ。

ちなみにこのロナウジーニョとスタムの「弱点」「強点」の関係は、ある意味、日本代表のSBアレックス起用の考え方の参考になる気もしますが…、それはまた別問題!?
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