親善試合「ジーコ日本代表対マルタ代表」戦 4年間の集大成とアクション、リアクションの関係

■「高い位置でボールを奪って」「中央やサイドなどで攻撃に変化をもたらしたい」といってましたが…

――どういった課題をもってマルタ戦に臨むか?
 この前のドイツ戦は、引いて相手にボールを持たせながらやっていた。今回は守備のことを考えると、相手のエンドでボールを奪って攻撃的な形を試したい。ボール回しもスピーディーにやりたいし、できるだけ高い位置でボールを奪って中央やサイドなどで攻撃に変化をもたらしたい。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/kaiken/200606/at00009330.html

マルタ戦の話の前に、まず試合前のジーコ監督のコメントから。確かにこの試合前にジーコの課題は「高い位置でボールを奪って」と言う部分もあったと思いますが、この試合で大事であったのはその部分よりも「中央やサイドなどで攻撃に変化をもたらせたい」というコメントの部分だったと思ったんですが、みなさんそうではありませんでしたか? で、それを踏まえて試合後の中田英と中村のコメントを読むと、中田英は前者の「高い位置」の課題について、中村は後者の「変化」の課題について言及しているように感じました。

●中田英寿選手(ボルトン)
「今日の収穫はない。まず走らないことにはサッカーはできない。その根本ができてない。ワールドカップに向けて? ワールドカップのためだけにやっているわけではない。高い位置からボールを奪うサッカーをしたかったけど、気持ちの部分でできていなかった。本番に向けて足りないのは気持ちの問題。それは個々に感じることだ。僕は自分のコンディションを上げることに集中したい」http://www.jsgoal.jp/news/00033000/00033944.html
●中村俊輔(セルティック)
「W杯では、先制されて相手が引いてしまうこともあると思う。そこで相手をサイドから崩していくのに、今日はサイドからFWにあてるくさびがミスをしてしまった。僕の精度もよくなかった。今からW杯までできることはそんなにない。一番にチームの雰囲気をよくすること。ピリピリする必要はないと思う」
http://sports.nifty.com/saposta/cs/masujima/details/060605004237/1.htm

中田英が言う「高い位置でのプレス」も、中村が言う「崩し方(変化)」ももちろん両方大事だと思いますが、このマルタ戦に関して言えば断然、中村が言う「崩し方」に問題があったと思うんですけどね。もちろん、高い位置でのプレスは必要だと思います。「高い位置」でボールを奪って攻めればゴールになる確率は高いですし、それを狙うこと自体は間違ってないと思います。ただ、その「高い位置からプレス」戦術が効果的な相手と、そうでない相手がいると思いますし、このマルタ戦に関して言えば「高い位置からのプレス」が効果的でなかったというかポイントではなかったと言いたいわけです。その理由は、マルタ代表がかなり引いて守って自陣でスペースを消す「リアクションサッカー」をしてきたから。このリアクションサッカーとは、別の言葉で言えば「ボールをポゼッションしないサッカー」とか「カウンターサッカ-」とでも言いましょうか? つまりマルタ代表がボールを持っている時間よりも、日本代表がボールをもって攻める時間のほうが多かったため、「高い位置でプレスをかけて奪う」のが困難であったと言いたいわけです。もちろん、いくら相手が引いてようとも守備的であろうともボールを持つ時間がゼロということはないので「高い位置からプレス」が出来る時もあるわけですが、ただ、そのやり方でゴールを狙うのは機会があまりなかったと。だって、日本代表の方がボールを持って、ゲームの主導権を握って戦っている時間の方が、圧倒的に多かったのですから。

■「ジーコが代表の監督になってから、主導権を握って戦えるようになった」byファンバステン

日本と言えば、ジーコが代表の監督になってから、主導権を握って戦えるようになったという印象だね。これまでは、そういた戦い方をしたくてもできずに、選手は理想と現実のギャップにジレンマを抱えているようだった。日本代表は、ジーコを迎えて大きな進歩を遂げたと思うな。ワールドサッカーダイジェスト221号「マルコファンバステン・オランダ監督インタビュー」より

ワールドサッカーダイジェストに掲載されていたオランダ代表ファンバステン監督のコメント引用ですが、私もこのファンバステン意見に同意です。「主導権を握って戦える」とは、すなわちマルタ戦のような相手が引いた状態でも、自らアクションを起して攻撃してゴールを奪えるということ?

ここでちょいと日本代表のサッカースタイルの歴史を振り返ってみます。加茂監督時代~岡田監督時代のフランスW杯出場、そして前回の日韓W杯のトルシエ監督時代までを不利化ってみますと、そのスタイルは若干の形の変化こそあれ「ゾーンプレス」を基盤としたリアクションサッカーであったと思うんですよね。もちろん加茂監督時代も岡田監督時代もトルシエ監督時代も、自ら「アクション」を起こしてゴールを奪うこともありましたが、チームの基本戦術的には「リアクションサッカー」というものが根底にあったと。まぁ、そのスタイルを採用した背景には、世界的な(欧州的な?)サッカースタイルの流行みたいなものが影響していたように思えます。その理由は「日本人のスタイルに合っている」とか「日本が世界で戦うために有効」であるとか、監督の嗜好の問題でとかいろいろあったと思うんですが、それはそれで正しかったと思ってますし、その当時は「そのスタイル=リアクションサッカー」でしか世界に通用しなかったとも思ってます。で、そのスタイルで臨んでフランスW杯で初出場を果たし、日韓W杯で決勝トーナメント進出という「結果」を残すことに成功したと思う次第です(もちろん「リアクション」というスタイルのみがその飛躍の要因でないと思いますし、岡田&トルシエ監督のトータルな手腕があってこそ「結果」が残せたと思うわけですが)。ただ、フランスW杯では予選敗退し、日韓W杯ではベスト16進出ながらトルコ戦で敗退します。まぁサッカーでは勝敗は運に左右される部分もあると思いますので、その理由は一概にコレだと言えないと思います。ただ、その敗退した試合を見て、私は日本代表には何かが足りないと思いました。その「何か」は漠然としたもので、明確なものではありませんでした。ですが今思うに、たぶんその何かは「リアクションサッカー-にさらに磨きをかける」か、「リアクションをやめてアクションサッカーに変えるか」であったと。で、トルシエの後任を務めることになるジーコは、後者の考え方であったということでしょうか?

「ブラジル的」「黄金の中盤」「4-4-2」「自主性」などなど、ジーコのサッカーを語る上でさまざまなキーワードが上げられてきましたが、すべてを総括してジーコのサッカーを表せば「アクションサッカー-」ということになると思います。それは、加茂~トルシエ監督時代に実践された「リアクションサッカー(プレッシングサッカー)」とは少し毛色の違うスタイルであったと。スタイル変革の紆余曲折についてはここでは触れませんが、そのスタイルの変化はオランダ代表監督のファンバステンが認識できるくらいのものであったと言うことでしょうか? まぁもちろん、ファンバステンの「主導権」云々のコメントは適当な発言かもしれませんし、単なるリップサービスなのかもしれません。ですが、私もジーコの掲げるサッカー―は「自ら主導権を持って、自らアクションを起して」勝利をもぎ取ることが出来るサッカーであるとずっと思ってましたし、そのスタイルならばW杯で結果を出せると思って応援していたんですよね。

■マルタ戦は、ジーコ日本代表の「4年間の総括=アクションサッカーの総括」!?

さて話をマルタ戦に戻します。このW杯直前の最後の試合をどう捉えるかは人それぞれだと思いますが、個人的にこのマルタ戦をジーコ日本代表の「4年間の集大成」と言いますか、「4年間の総括=アクションサッカーの総括」みたいに考えてました。もちろん「対オーストラリア代表」という意味合いもあったと思いますが、それよりも「ジーコサッカーのスタイルの確認」であったと。対戦相手が強豪ではなく格下(?)のマルタ代表であった意味も、そういうことであると勝手に思ってました(笑)。で、そういう視点からマルタ戦を振り返ってみますと、満足できたところもあれば、物足りないところもありました。

■マルタ戦:よかったところ:ゴールシーンとサントスの突破はよかった!?

満足できたところは、まず得点シーン。前半早々のゴールでしたが、左WBのサントスはセンタリングに至るまでの「個の勝負のアクション」はすばらしかったと思いましたし、ゴールを決めた玉田のシュートも「思いっきりがいい積極的なシュート」ですばらしかったと思いました。特にサントスは、このゴール以外のシーンでも積極的に左サイドで勝負して突破してセンタリングを上げていました。他の選手のお膳立てもありましたが、自ら仕掛けてチャンスを作っていたその姿勢は評価したいです。

ちなみに逆サイドのWB駒野ですが、中田英の折り返しのこぼれダマをミドルシュートしたシーンはすばらしかったと思いましたが、もっとサイドで勝負しかけてもよかったと思った次第です。まぁバランス感覚はすばらしかったですし、自ら仕掛けるよりも味方に使ってもらうことで生きるタイプなのかもしれません。これはサントスと途中交代で左SBとして出場した中田浩二もいっしょ? まぁSBの攻撃参加では「ドリブルの仕掛け」よりも「タイミングのよいオフザボールの動きによる攻撃参加」のほうが有効な気もしますし、中田浩二はサントスよりも「それ=オフザボールの動き」ができていたと思いますが、決定的なチャンスを演出するまではいきませんでした。

以上、満足したところといいますか、「サイドバックの攻撃参加」について書きましたが、このサイドバックの攻撃参加というのは「主導権」を握ってないとできないものであると思うんですよね。まぁ、このサイドからの攻撃は岡田監督時代もトルシエ監督時代も「武器」ではありましたし、ジーコのそれとあまり変わらないと感じる方もいるかもしれませんが。

■マルタ戦:少し良かったところ:中村と小笠原の「縦のポジションチェンジ」からの中央突破

続いて少しよかったと感じたのは、クサビパスからの中央突破でしょうか。後半38分。ゴールにはなりませんでしたが左SB中田浩二の小笠原へのクサビパスから、中村のオフザボールの動き&小笠原のヒールパスで中村が中央突破。ドリブルで突破するもファウルで止められFKのチャンスとなった場面はすばらしかったと思いました。



                     ↑
                ↓   ○中村
              ○小笠原 ↑
                     ↑
                     ↑
   ●中田浩二
このシーンよかったのは2つ。1つは中田浩二が「サイドの高い位置」からクサビパスを入れたこと。ボランチの中田英のところかからのクサビパスもすばらしかったのですが、パスの出しどころが多ければ多いほど中央突破には有効であると思うんです。相手も読みにくいと思いますし。なのでSBやWBには出来る限り「起点」となってもらいたいです。それがアクションにつながると思うから。2つ目は小笠原と中村の「縦のポジションチェンジ」が決まったこと。アクションサッカーを実践するうえでは、どこかで仕掛けることが必要であると思っています。それは「ドリブルでの仕掛け」でもいいですし、「ポジションを積極的に変えて相手を混乱させる仕掛け」でもOKだと思うんですが、ここではそういう「仕掛け」がすばらしかったと。まぁゴールにならなかったのは残念ですし、不満でしたが。

■マルタ戦:物足りなかったところ:大黒のノーゴールと中盤からのミドルシュートの少なさ

続いて物足りなかったところ。これはまず厳しいようですがFWでゴールできなかった大黒ということになるんでしょう。前半ポストを叩いたシュートシーンは見事でしたし惜しかったですが、ああいう決定的なシーンを決めるか決めないかでは天地の差なわけで。決めることができなかったのは、やはり評価できないかなぁと。その他にも後半に小笠原や中田英のスルーパスに反応してDFラインの裏を突破するシーンがあり、その動き自体はすばらしかったですが、「スペースがないところ」での自らゴールするイメージというか意図がTV画面からでももっと伝わってきてほしかったです。

まぁ彼よりも物足りなかったというか、この試合で一番物足りなかったのは「中村、小野、中田英、小笠原、稲本」という中盤のプレイヤーです。ともかくシュート(ミドルシュート)が少ないって感じました。前半、中村がショートコーナーからシュート打ったり、後半に稲本、小野、小笠原がシュート打ってはいますが、もっと「中盤がシュートに絡む攻撃」をイメージして行うべきだったと思うんですよね。特に後半はワントップ気味にして中盤を分厚くしたシステムをとっていたわけで、そういうシステムからゴールを奪うにはFWよりも中盤の選手が「シュートレンジにポジションを取る」ことが必要であると思うわけです。後半40分過ぎに左サイドから小野がセンタリングを上げるシーンがあるんですが、このときゴール前には巻が一枚で、逆サイドに小笠原がいるという感じでした。


【後半40分過ぎ:中盤の消極的ポジション】
                     ●GK

                ●DF   ○巻     ●DF     ○小笠原


     ○小野
              ○中村

           ○中田英

中田英、中村がゴール前にはポジションをとってなかったのは、連携の問題? コンディションの問題? 意志の問題? いくらセンタリングを入れても、ゴール前に「決める人」がいなくては意味ないと思いますし、ゴールにならないと思うんですよね。昨年行われた親善試合ボスニアヘルツェゴビナ戦の中田英のロスタイムのゴールを覚えてますでしょうか? あのゴールは中村がセンタリング上げて中田がヘッドで決めたんですが、その時のゴール前に3人張ってました。まぁ慣れないフォーメーションであったとか、守備が堅かったとかいろいろ言い訳はあると思います。ただ私が聞きたいのは、自らゴールを奪うためのアクションをどれくらい起しましたかということです。高い位置から奪ってゴールを目指すというイメージもいいですが、自らボールを持った状態から「自ら動いてシュートを決める」イメージをもっと持ってもらいたい。そして、その頭の中のイメージを実践できるように動いたり周りに要求してもらいたいということです。

冒頭で紹介した中田英の試合後のコメントにある「走ること」は間違いなく必要であると思います。同じく「気持ち」も必要であると思います。で私的には、その「走ること」「気持ち」を、「自らゴールを決める」というイメージに昇華してほしいわけです。誰かが決めてくれるという「気持ち」じゃなくて、自分で決めるという「気持ち」を持ってもらいたい。そういう気持ちがあれば、少なくとも「シュートゼロ」で終わることなんて、ないと思いますから。

■マルタ戦:総括:「アクションサッカーの総括」という意味では正直ガッカリでした!?

というわけで長くなりましたが総括。まぁ「4年間の集大成」という意味ではガッカリな内容でした。もっと「主導権を握って戦える」と思っていたんで、その意思が一部の選手からあまり伝わってこなかったのは残念でした。まぁ、その前のドイツ戦が見事な「リアクションサッカー」ができて、選手にそのいいイメージが残っていた結果の「アクションサッカーの不出来」ということなのかもしれません。ジーコ的にはチームがそういう「極度のリアクション重視」の心理状態に陥らないように、今までチームを作ってきたと思うんですが、この時期に選手が「アクション」することよりも「リアクション」することばかり考えていては内容がリアクションに傾く状態になるのは致し方ないところでしょうか。まぁW杯で勝つためには、基本リアクションサッカーで臨むべきだと思うので、それはそれでOKなんですがね。というわけで、泣いても笑ってもいよいよ本戦です。オーストラリア戦です。まずは中田英が言うように、「走ること」「気持ち」で負けないようにがんばってもらいたいです。w杯の試合では基本は「リアクションサッカー」が求められ、状況に応じて「アクションサッカー」が求められるシーンが出てくる内容になると思ってます。で、今のジーコ日本代表は、そのどちらにも対応できる「下地」はあると思ってます。W杯アジア予選での激闘しかり、優勝したアジア杯での激闘しかり、コンフェデでの激闘しかりです。なので兎も角「負けない気持ち」「怖がらない気持ち」そして「受身にならない気持ち」をもって臨んでもらいたいです。以上。がんばれ~!!!!
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