ジーコ日本代表W杯プレビュー「対オーストラリア代表」①  「壊す」ヒディンクとオランダサッカー

■ヒディンクは「壊し」にくるのか!? ジーコは「壊さずに」くるのか!?

2002年ワールドカップの韓国、チャンピオンズリーグのPSVを見てもわかるように、ヒディンクの戦術はあらかじめポジショニングプレーを徹底的にたたき込み、さらにフィジカルコンディションを万全に整える。その上で、スカウティングによって相手の長所をフィジカルでつぶすのだ。
「ドイツ戦を見たが、ジーコのチームはブラジリアンタッチでプレイを楽しんでいる。速さもある。難しい試合になるだろう」とヒディンク。日本の中盤はオランダ以上にテクニカルで創造的だ。そこを壊しにオーストラリアは激しく来るだろう。http://sports.yahoo.co.jp/hl?c=japansoccer&a=20060605-00000031-spnavi-spo

スカパーなどでお馴染み中田徹氏の記事からですが、やっぱ「壊し」にくるのかなぁヒディンクは。このオランダ戦はほとんど観戦できなかったんですが、かなり激しかったみたいで。スナイデル、コクーらがやられたみたいですが(重症ではなかった?)、中村、中田英にはぜひとも気をつけてもらいたいところ。マルタ戦のところで書いた「アクション」「リアクション」の話でいうと「壊す」ってことは「リアクション」だと思うんですが、となるとオ-ストラリア代表はある程度「中盤を省略したサッカー」でくることになるのでしょうか。中盤省略してワントップのビドゥカ目掛けて放り込んで、そこから左右のウインガーへ展開して攻めるという形がなんとなく想像できますが、まぁ当然これはジーコも想定の上?

ジーコ監督が「最後の課題」に挙げたテーマは「反則をしない」だった。「相手は日本を研究してくる。サイドで反則を誘って、放り込んでくるだろう。だから反則をしないこと、相手が背を向けているときに不用意にいって反則を取られるケースがあるが、相手にバックパスさせればいい。不必要な反則はしないことを確認したい」。自分たちの首を絞める反則をしないことを徹底させる。http://sports.yahoo.co.jp/hl?c=worldsoccer&a=20060606-00000088-nks-spo

「不用意な反則をしない」とは言い換えれば、「壊さない」ということでしょうか? この「ヒディンク=壊す」、「ジーコ=壊さない」という、相反する考え方が、そのままチームカラーや戦術を表しているのかわかりませんが、興味深いところですねで、ジーコのコメントに注目してみます。ここで言う「不必要な反則をしないこと」は確かに重要だと思いますが、あくまで「不必要」なという但し書きがつくところがポイントなんですよね。言うまでもなく反則が必要な場合だってあります。たとえば失点に直結するような場面では、それこそファウルをしてでも「壊して」でも止めないといけないと思うんです。そこで大事なのが、ファウル「する」べきか「しない」べきかという見極めや判断ができるか。で、それを判断するのは、あくまでピッチ上の選手であり監督ではありません。これはどのチームでも同じです。ジーコ日本代表でも、オーストラリア代表でも一緒。先程、ヒディンクが「壊す」と書きましたが、この「壊す行為」にも「する」か「しない」という判断は当然問われます。「壊す」=「反則」ということになるかわかりませんが、壊すことを「どの程度」やるか「どこで」やるかは当然、ポイントとなると思うんですよね。激しくフィジカルでいくなら、その日の審判のジャッジの基準も考えないといけないでしょうし、すでにイエローカードをもらっているかどうかも考慮すべきだと思います。ファウルする位置がペナルティエリアの中か外かというのも当然、考えなければなりません。で、もう一度言いますが、それを判断するのはピッチ上のオーストラリア代表の選手。ヒディンクは指示できるのでしょうが、判断することはできません。

当たり前のことを書いてますが、何が言いたいかと言いますと結局サッカーとは「ピッチの中」で行われているものであり、選手がプレイするものであるといいたいわけです。もちろん監督の存在も大きいと思いますし大切な要素だと思いますが、試合でプレイするのは選手であり、試合中に考えて判断するのも選手なわけです。

■オランダサッカーのコーチングにみる「選手ありき」という考え

なんでこんな当たり前のことを書いたかと言いますと、それは同じく中田徹氏のスポナビの「オランダ通信」というコラムを読んだからだったりします。

『お前、ここ(の位置)に来てばかりだから、ボールを下げるしかないじゃないか!』って監督がよく選手に言っちゃいますよね。でも試合でプレイするのは誰かと言ったら選手。スタジアムで観客が騒いでいたら、監督から選手に指示は伝わらない。試合中のプレイの選択を選ぶのは選手なんだから、練習の中で選手が自分でプレイの選択をできるようにしておかないといけない。http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/0506/holland/column/200606/at00009290.html

「オランダサッカー、5つのエッセンス」ということで、オランダサッカー協会(KNVB)の指導者資格1級を取得したという林雅人のインタビューをまとめられているんですが、これがおもしろい! 私が参加しているサポスタ企画でもこのコラムを紹介させていただいたんですが、私のブログのほうでもちょいとピックアップさせていただきます。

まずは上で引用した部分ですが、これは今回述べてきた「選手ありき」という考えを監督・コーチという視点から考えたもの(?)。要は監督があれしろ、これしろと直接的に言わないで、ピッチ上で選手が考えて答えを出すように導くやり方がオランダでは行われているということでしょうこのやり方は、確かモウリーニョも同じだった記憶があります。練習中にプレイを止めて選手に考えさせるようにしていると何かのインタビューで読んだような。で、これってたぶん例の日本代表の緊急ミーティングに代表される「話し合い」も同様な気がするんですよね。もちろん監督の誘導の仕方やコ―チングの仕方には違いがあるとは思いますが、「選手に考えさせる」という考え方は一緒だと思う次第です。それが計算ずくのものなのか、経験によるものなのかは別としてね。

あと興味深かったのは「戦術論」のところですね。プレッシングについて語られているのですが、「ボールを持ったプレス」という発想はおもしろいです。

プレッシングサッカーと言うと前からFWがガンガンプレスをかけ、ほかの選手が連動するイメージがあると思います。しかし自分たちが下がって、相手に主導権を握らせておいて、ボールがどこか自陣に(例えば中盤に)入ってきたときに一斉に連動してプレスをかけるのもプレッシングサッカーと言います。ヘラクレスなら前からでなく、下がってラインを狭くして、ボールが入ってきたときに一斉に全員でプレスをかけるサッカーをしている。
プレッシングサッカーは、ボールを持っているときにもできる。テンポを上げながら左右にボールを散らして、相手のDFをずらす。ボールを戻してまたサイドに散らして、どんどん前にボールを運べば、相手のラインは下がっている。ボールを奪われたときには、敵陣地での密度が濃くなっている。このシチュエーションは攻撃のときに作られている。しかし縦にロングキックを蹴って相手DFを下げるのは、プレッシングサッカーとは言わない。ボールを取られたときには、DFとFWの距離が間延びしていますから」
――ではヒディンクがよくやる、相手のDFの枚数と自分のFWの枚数を同じにしてプレスをかけるやり方は?
「これもある意味プレッシングサッカーでしょうが、1対1の能力がかなり求められます。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/0506/holland/column/200606/at00009291.html

ここで語られている「高い位置でのプレッシング」と「低い位置でのプレッシング」に関してはいろいろなところで語られているので目新しくはないですが、ボールを持ったときのプレスという発想は初耳でしょうか? 「ボールポゼッション」と「プレッシング」は相反するものというイメージがあったので、この発想はちょっと気になりました。まぁ要は「サイドチェンジ」を駆使して「コンパクトにしたまま敵陣にビルドアップ」すること? バルセロナとか得意としているやり方ですが、この攻撃時における「プレス」というのはこれからますます注目されていくような予感がします。

■オランダに勝利のメンタリティーを与えたヒディンクは脅威ですが、試合をするのは…!?

というわけで非常に興味深い「お話」が満載のコラムなんですが、最後に林氏が「オランダは“勝ち”にこだわってきました」と言っているのがこれまた興味深かったりします。で、この「オランダサッカー」に「勝利」の要素を注ぎ込んだ人物こそが、現オーストラリア代表監督のヒディンクだと思うんですよね。今のオーストラリア代表からは「オランダの匂い」がプンプンします。それも「負けてもいいから美しく」という勝負弱いオランダでなく、美しく理論的なトータルフットボールの中にもあくまで勝利にこだわるオランダの匂いとでも言いますか。それはジーコ日本代表にとって非常に脅威であるわけですが、ただ何度も言いますようにサッカーとは最終的には監督がやるものではありません、ピッチ上の選手が行うものです。監督で考えれば「ブラジル対オランダ」という要素はあると思いますが、あくまでも試合は「日本代表対オーストラリア代表」の試合であると言うことです。まぁ当たり前ですが。

最後に今週のサッカーダイジェストの記事で中村のコメントでこの項を終えたいと思います。

「今回は3-5-2.だから4-4-2でやるようなボール回しは難しいと思っている。相手が4バックならサイドの裏はどうしても狙われるし、だったらいったん引いてわざと持たせて、カウンターをねらえばいい」週刊サッカーダイジェストvol842、特集「日本代表ラストスパート」より。

さて、日本代表対オーストラリアの一戦。「リアクション対リアクション」の戦いとなったら、試合はどんな展開になるんでしょう? 「破壊」対「破壊」?

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