「オシム日本代表対ガーナ代表」雑感 トータルフォットボール懐疑論

■「流暢なポジションチェンジ」に、ちょっと危険な匂いを感じてしまいました

残念ながら負けてしまいましたね。ちょっと忙しく試合終了からある1日経ってしまいましたが、個人的に気になったところを書いてみたいと思います。

日本のゴールシーンはなかったが、面白い試合だった。その一番の理由は、日本代表から、クライフ率いるオランダ代表が見せた”トータルフットボール”のような、ポジションにとらわれない流動的なサッカーの香りを感じたからである。http://llabtoof.blog38.fc2.com/

「トータルフットボール」さんからの引用ですが、そのようなブログ名をつけられているということは、やはりトータルフットボールというものがお好きなのでしょうか? まぁそれはいいのですが、私も今野の攻撃参加の動き=最終ラインからの前線へのオフザボールの動きに「オシムサッカーの香り」みたいなものを感じましたし、オシム日本代表に「トータルフットボール」の香りを感じました。今野の攻撃参加自体はすばらしかったと思いましたし、彼のみならず他の3バックのプレイヤーである水本も阿部も最終DFラインからふつうに攻撃参加しているシーンが目につきました。たとえば後半、阿部がオフザボールの動きを見せて中盤に攻め上がり、遠藤と2人で縦のパス交換し、右サイドの羽生へ展開した形は「ガーナDFを崩せていた」ましたし、いい攻撃だったと思う次第です。この最終ラインからのリスクを負った攻撃参加が今回のオシム日本代表の収穫なんでしょう。たぶん、一般的には。ただ、私はそのDFラインからの攻撃参加というか「流暢なポジションチェンジ」に、ちょっと危険な匂いを感じてしまいました。

■鈴木啓太がふつうに3バックの右としてプレイしていたことに対する「怖さ」

同じく後半にDF水本が攻め上がったシーン。右サイドでガーナにボールを奪われてカウンターを食らい、最後は阿部がペナルティエリアラインのギリギリ手前でファウルして止めんですが、その場面を覚えてますでしょうか? その時の最終ラインの3人は「阿部、今野、鈴木啓太」。DF水本が攻め上がったのを受けて鈴木啓太が淀みなく最終ラインにポジションチェンジしていたんですが、この鈴木啓太のカバーリングはすばらしかったと思います。すばらしかったというか、チームとしてのお約束だったんでしょう。その鈴木啓太の状況判断はすばらしいと思うのですが、ただ、あまりにも「当たり前」にカバーリングが行われていたことに、逆に怖さを感じてしまったんですよね。基、カバーリング自体は何の問題もなくすばらしいのですが、カバーリングしたあと、鈴木啓太がふつうに3バックの右としてプレイしていたことに対する「怖さ」とでも言いますか。鈴木啓太が3バックでプレイすることが「特殊なこと」でなく、なんとなく「仕様」となっているように感じたんですよね。

■テリーは攻めあがっても、猛ダッシュしたりして自分のポジションに戻るんです

たとえばチェルシーでも最終ラインからテリーやカルバーリョは状況に応じて攻め上がるし、それ事態はオシム日本代表の今野、水本と同じなんですが、ただ大きく違うのはチェルシーのテリーやカルバーリョは基本的に攻め上がった後は、猛ダッシュしたりして自分のポジションに戻るんですよね。もちろん状況に応じて「攻め上がったままのポジション」でプレイすることもありますが、その状態は「特殊」でありイレギュラーな状態であるという認識がピッチからひしひしと伝わってくるんですよね。テリーが上がったあとはマケレレとかランパードがそこをカバーしているんですが、彼らのプレイからは「俺らが食い止めている間に早く戻ってきてくれ」ってメッセージが見えるんですよ。「早く元のポジションに戻りたーい」という選手たちの雰囲気を感じるとでも言いますか。これって要は不慣れなポジションでプレイしていることに対する選手のぎこちなさであったり、こちらの見る側の違和感ってことなんでしょうが、そういう不協和音がオシム日本代表ではあまり感じないんですよね。たとえば3バックの選手が攻め上がった場合、最終的には元のポジションに戻るのですが、急いで戻らないでふつうに他のポジションでがんばってプレイしちゃうわけですよ。ポジションチェンジしたことに対する「イレギュラーさ」というか「特殊感」みたいなものを、ピッチ上の選手があまり感じてないといいますか。これはオシムの言う「ポリバレント」ってやつで良いことなのかもしれないですが、天邪鬼な私にはそう見えない場合も多々あったんですよね。

「私は基本的にDFのポジションを務めてますが、今の時間帯はFWの位置でプレイしてます。なにか問題でもありましょうか? 私の元いたポジションには、鈴木啓太選手がプレイしているので、あなたにとやかくいわれる筋合いはないと思いますけど。あのー、あなたビブスの練習ってご存知ですか? 知らないなら、これ以上話しても意味がないし、あなたにはご理解できないかも知れませんがね」みたいな感じが、ピッチの至るところからヒシヒシと伝わってきたんですよね。まぁ、そう感じたのは私だけかもしれませんが。

■「誰が、どの名前が重要なのではない」とオシムは言いますが…

これは選手によく伝わるように書いていただきたいのだが、攻撃も守備も両方できる選手でなければ、その選手の未来は短い。それが現代のサッカーのトレンドだ。だから山岸智であろうが、駒野であろうが、佐藤寿人であろうが、誰が、どの名前が重要なのではない。サッカーでは、そこでチャンスがあるか、スペースがあるか、ピンチなのか、相手がどのディスタンス(距離)で迫っているのか、ということに素早く反応して攻撃したり守備をしたり、そういう素早い切り替えができないといけない。そういう点を見ていただきたかったのだ。http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/kaiken/200610/at00010829.html

ここでオシムの言葉の登場です。今回はちょっと言わせてもらいます。「攻撃も守備も両方できる」のは確かに現代サッカーでは重要だとは思いますが、「山岸智であろうが、駒野であろうが、佐藤寿人であろうが、誰が、どの名前が重要なのではない」というのはまったく同意できません。私は山岸は山岸であり、駒野は駒野であり、佐藤は佐藤であると思ってますし、「誰が」というのは非常に重要なことであると思っているからです。たとえばチェルシーで言えばランパードとテリーではプレイスタイルがまったく違うし、得意なプレイも違う。ランパードは中盤でボールを捌いたりミドルシュートしたりするのが得意だし、テリーは最終ラインで相手FWを捕まえたり、自陣のゴール前で体を張って守備するのが得意。ランパードのプレイをテリーに求めるのは酷だし、その逆もしかりと思っているからです。えっ? そんなことは当たり前だし、オシムはそういうことを言っているわけではない? まぁそうかもしれませんが、今のオシム日本代表は「ポリバレント」を重視し過ぎで、逆に「スペシャリスト」がいない気がするんですよ。中盤もできるし、最終ラインもできる、状況に応じて前線にも顔を出せるし、サイドでもプレイできるやつがチョイスされ、1部を除いて全ポジションできるように仕込まれてますが、なんちゅうかその流動的なポジションチェンジするしぐさに「器用貧乏なイメージ」を感じてしまうんですよね。「トータルフットボール」というものを、ちょっと甘く考えているように感じるとでもいますか。

別にポジションチェンジをするなと言っているわけではないです。リスクを冒してポジションチェンジすることは重用だと思いますし、そういうプレイは必要だと思ってます。ただ私は言いたいのは、複数のポジションをこなすというのはそれ相応の才能が必要であり、世界を見回しても、そういう本当の意味での「ポリバレントなプレイヤー」はいないのではないかということ。

■極論で言えば「怖さ」はオシム日本代表の最終ライン3人が、みんなソリンに見えたとでも言いましょうか

ただ、僕が気になったのは中田が前へ動いたときの周囲の反応である。たとえ皆が引いたほうがいいと考えていたとしても、現実にボランチの1枚がマークを置いて相手のサイドバックに突進しているのだ。
「事件は会議室で起こってるんじゃない!」
 という映画のセリフがあったが、現実に中田が動いてしまっているなら、誰かがカバーに回るしかない。火事になっているのに、出火の原因はオレじゃないといってもどうにもならないではないか。目の前の火を消すのが先決だ。そのあたりの反応が、どうにも鈍いように思えたのだ。http://www.sponichi.co.jp/wsplus/column_n/04445.html

ちょっと前に、西部さんがスポニチで書かれていた文章から。ここでいう中田英が空けたスペースにカバーに入るというのと、昨日のガーナ戦で水本が攻め上がったスペースに鈴木啓太が入ることは、果たして同じことなんでしょうか? たとえばペケルマン監督時のアルゼンチン代表で、左サイドバックのソリンが攻め上がったスペースをCBのエインセが埋めることと、今野が攻め上がったスペースを鈴木啓太が埋めることは同じことと言えるのでしょうか? 同じといえば同じなのかもしれませんが、私はそこに違いというか「怖さ」を感じたという話です。極論で言えば「怖さ」はオシム日本代表の最終ライン3人が、みんなソリンに見えたとでも言いましょうか。そんなにソリンはいらないし、1人いれば十分と思ったからとでも言いますか。まぁ、特にすぐれたスペシャリストがいないならポリバレントで固めた方がいいということなんでしょうが、私は次元の低いポリバントをたくさん集めるよりも次元が低くても要所にスペシャリストを配した方がいい気がするんですけどね。

「トータルフットボール」というものをあまり信用してない私は臆病者でしょうか、それとも古い人間でしょうか?
人気blogランキングへ
ブログランキングranQ
↑読んでおもしろかった人はクリック願います。

参考文献
ソリンのお話
http://doroguba.at.webry.info/200603/article_24.html

トータルフットボール論 第1弾
http://doroguba.at.webry.info/200608/article_20.html

海外組と国内組
http://doroguba.at.webry.info/200606/article_25.html

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0