中村俊輔と松井大輔と「監督の示すサッカーの方向性」 フランスリーグ「ソショー対ルマン」を見て

■ケース①:マンチェスター・ユナイテッド、セルティックの場合

だいたい、センターバック2人と、中盤のセンター2人。あの4人で、相手陣内まで組み立ててボールを運んできちゃう。そこの質がウチを含めたほかのチームとは段違い。だから、前のほうの選手はパスを受けてアタックすることだけ考えてればいい。
Number672号 中村俊輔インタビューp22より。

Numberでの中村俊輔のインタビューから、マンチェスター・ユナイテッドについて。確かにユナイテッドの組み立てはすばらしいと思いますが、結局はそういう「つなぐ」サッカーをするために必要な選手をちゃんと集めて起用して機能させているファーガソン監督のチームコンセプトというかスタイルというかチーム作りがすばらしいんですよね。

その「チームコンセプト」というかスタイルは、「アクションサッカー/ポゼッションサッカー」か「リアクションサッカー/カウンターサッカー」の2つに分類できると思ってます。で、理想はもちろんその両方を使いこなすことなんでしょうが、現実的にはその両方を同時に行うのは至難の業。なぜかって言うと、「アクションサッカー/ポゼッションサッカー」をするために必要な選手というか求められるプレイと、「リアクションサッカー/カウンターサッカー」をするために必要な選手や求められるプレイには違いがあり、監督がどちらのスタイルを採用するかで起用する選手やプレイが変わってくるから。

スカパー!の某CL特集番組で、同じく中村俊輔がセルティックとレッジーナ(セリエA)でのスタイルの違いというか求められていたプレイの違いを語っていたのが印象的だったんですが、今の中村俊輔のプレイを見ると「監督の示すサッカーの方向性」というのが、選手にとって非常に重要であるというのを実感してしまうのは私だけでしょうか?(反語)

■ケース②:ルマン/ソショーの場合

先週末はチェルシー戦がなかったこともあり、フランスリーグアン「ルマン対ソショー」戦を観戦。久々にルマンの試合を観戦したんですが、このチームこんなに中盤のないサッカーをしていたんだっけと改めて思ったりして。昨シーズンはもう少し「つないでいた」記憶があったんですが、中盤のメンツが変わったこともあり「新しいメンツ」に合わせたサッカーをやっているというところなんでしょうかね。個人的には昨年のつなぐスタイルのがいいように思うんですが、現在リーグアンで第10位と結果を残しているわけでアンツ監督の敢行した「サッカースタイル変更」は評価すべきなんでしょう。まぁ、まだシーズン途中で、今後どうなるかわかりませんが。この試合、松井はベンチスタートでしたが、今のハーフカウンター戦術チームじゃベンチスタートも仕方がないよなぁと思ったりして。まぁルマンの試合をいつも見ているわけではないので、なんとも言えませんが、この試合を見た限りでは松井のようなテクニカルなウイングはあまり生きないよなって思いました。後半途中に出場して、攻撃時にボールに絡んだのは3回くらいでしたかね。いいセンタリングを上げたシーンや、オフサイドでノーゴールだったシュートシーンなどはありましたが、「生かされてない」という感じでした。要は今のルマンは「パスセンス無いけど守備力&フィジカルあるボランチ」の起用を選択して、その代償として「センスあってパスもつなげるけど、フィジカルいまいちの松井」が飼い殺しにしているようにさえ感じましたが、そう感じたのは単純に私が日本人だからかもしれません。ルマンはお金があるクラブではないですし、現有戦力から監督が勝てるスタイルを模索して今のスタイルになったんでしょうし、確かにフランスリーグアンで勝ち残るためには「フィジカル重視」したほうが確率的に高いですからね。なのでアンツ監督の戦術采配もわかるんですが、ただこの日対戦相手だったソショーのやっていたサッカーは「中盤でパスをつなぐスタイル」だったわけでして。ルマンもそのような「つなぐサッカー」したほうが機能するし松井のプレイも生きるんじゃないかなぁという、親馬鹿的な考えをしてしまったんですよね(笑)。いやほんとソショーはいいサッカーをしていました。前半は特にすばらしかった。監督は元マルセイユというかポーツマスのペランですが、彼はこういうパスサッカーを嗜好するだと感心したほど。このところ勝ち星に恵まれなかったみたいですが、現在リーグアンで第4位と結果も出しているのは評価したいところですね。ポーツマス時代は、結果を残せませんでしたからね。まぁそれは置いておいて、ソショーが「つなぐサッカー」を実現できていたのは、要は中盤というかボランチに「ボールを持てて、パスをつなげる」選手を起用しそういうプレイができるように監督が配慮していたからなんですよね。後半はちょっと運動量が落ちて中盤が孤立してた感がありましたが、ソショーの中盤の選手のパスをもらうポジショニング&パスを出す視野の広さはすばらしいと思いましたし、彼らが中心となった組み立てはすばらしいと思いました。もっともこのチーム、中盤でパス回せるのはいいのですが、ゴール前で勝負を仕掛ける技術&シュート技術はまだまだな感じで、「決定力のなさ」がしばらく勝てなかった原因と感じました。FWには元リバプールのル・タレクとか元ゲンクで鈴木のライバルだったダガノとか出てましたが、昔と変わらずフィニッシュの部分がイマイチなんですよね。決定力のなさはしかたがないところなのかもしれませんが、そのゴールに向かうまでの過程がすばらしかったのは評価したいところ。もし松井がこのチームにいたら、かなり期待できるのにって思ってしまいました。

ってわけで、「中盤が守備的でパスをつながないルマン」と「ボランチがきちんとつなぐソショー」という好対照なチームでの戦いだったわけですが、「監督の示すサッカーの方向性」の重要さを改めて感じた次第です。

■ケース③:レアルマドリードの場合

攻めの形が常に中盤から始まるイタリアに対し、スペインでのそれは最終後列から、つまりDFラインからスタートする。その違いがMFに求められる仕事の質を著しく変えるのだ。前者、つまりイタリアでいう攻めの基本的とはカウンターを指し、MFには敵のボールを奪い、その瞬間に激しくラインを押し上げ、前に畳み掛けるプレーが求められる。(中略)だがスペインはそうではない。DFラインから攻撃がスタートするサッカーでは、よりレジスタ的な資質に長けたMFが中盤に求められる。守備的MFかレジスタか。(中略)その比率がイタリアでは7対3、スペインでは逆に2対8に近い割合でゲームメイクに比重が置かれる。
Number672号 ファビオカペッロインタビューp66-67より。

カペッロがレジスタを起用するというのはちょっと意外な気もしますが、要は開幕前の自分のアテが外れたってことなんでしょうかね。エメルソン&ディアッラを補強したのはカペッロで、それが「機能しなかった」と素直に認めているのはさすがですが、シーズン前にわかっとけよというのは酷な話なんでしょうか。「イタリアとスペインの違い」について語ってますが、結局それは言い訳なだけという気がします。たぶん「エメルソン&ディアッラ」のスタイルで結果が出てれば「イタリアとスペインの違い」なんて言わなかったろうし、シーズン前は「イタリアでもスペインでもサッカーは変わらない」という思いがあって「エメルソン&ディアッラ」を連れてきたと思うんで。まぁ、自分の間違いを素直に認めるというその姿勢はすばらしいと思いますが、「監督の示すサッカーの方向性」の重要さをここでも改めて感じた次第です。

「現有戦力を詳細に分析し、その時点で最も優れた策が何なのかを常に見極めようととするのが、私の一貫したやり方だ。なにか1つの手段、1つの戦術システムに固執するようなことはこれまでした覚えがない」
Number672号 同じくファビオカペッロインタビューより

しかし、よくもまぁこんな戯言を言えるよなぁカペッロは。「エメルソン&ディアッラ」を連れてきたのは「1つの戦術システムに固執」したからであって、そこには「最も優れた策が何なのかという見極め」があったとは到底思えないんですがね。まぁ流石にオレ流でやろうとしたがダメだったとは言えないか。

ってわけで、名将カペッロが教えてくれたように、「監督の示すサッカーの方向性」はお国柄や、現有戦力の分析や、勝敗が多分に影響するということでファイナルアンサー?
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