親善試合「オシム日本代表対ペルー代表」超雑感 水を運ぶ人と、理想と現実と妥協

■「ジーコ日本代表」的に戻っていたこと

遅くなりました&今さらな感じもしますが、先日のペルー戦について。すでに多くの方がこの試合について語られてますが、私的にはLooseBlogさんや、蹴閑ガセッタさん、Romantic-Reasonさんの考えに近いです。要は中村俊輔と高原がピッチに立ったペルー戦は、サッカーのスタイルが「ジーコ日本代表」的に戻っていたとでも言いますか。そうなった理由はいろいろ考えられるのでしょうが、私的にはスポナビのコラムで宇都宮氏が指摘している「チームの顔ぶれは、昨年のW杯とほとんど変わっていない」ってところが大きかった気がするんですが、そうでもないんですかね。

あの「ドルトムントの終戦」から9カ月。彼ら3人が代表に戻ってきたことで、止まったままになっていた時計の針がようやく動き出したのである。
 鈴木啓太と田中マルクス闘莉王が加わっているとはいえ、実のところチームの顔ぶれは、昨年のW杯とほとんど変わっていない。しかし、ベンチに控える選手たちは思い切り刷新され、しかもスタメンとサブの垣根は、去年までとは比べ物にならないくらい低くなっている。それこそが、オシム体制以後、国内組で戦い続けた成果である。
 誰がピッチに立っても、どんな新しいヒーローが誕生しても、何ら不思議ではない緊張感に満ちた楽しさが、今の代表にはある。だから、今日の試合にワクワクする理由というのは、決して欧州組だけに帰するものではない。http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/column/200703/at00012704.html

もちろん、ペルー戦はあくまで「ジーコ日本代表的」だっただけであって、すべてが「ジーコ日本代表」だったわけではありません。当たり前ですが。で、何が違っていたかといえば、それは「鈴木啓太と田中マルクス闘莉王が加わった」こと。特に「鈴木啓太」をボランチの位置で起用していたことがオシムとジーコの違いだったと思うんですが、その理由は以下のオシム監督の約1年前のコメントに書いてあるのかなぁと。

■「水を運ぶ人」ってやつです

日本で言えば、例えば中盤に小野がいますよね、小笠原、中村、中田英寿、それだけいてアレックス(三都主)もいます。さらに前線に玉田や柳沢といっぱいいるわけです。誰が見てもこの選手は試合に出るべきだという選手が6人はいます。ただ、そういう選手のうち、ディフェンシブな選手はいるのですか。全員攻撃的な選手です。では、一体誰がディフェンスをやるのですか。サッカーは4人で守ることはできないのです。サッカーというのは、バランスを保つために水を運ぶ役割をする選手が必要になってくるわけです。そういう意味ではジーコのチームでも同じことが起こっているわけで、その話をさっきしていたわけです。福西ひとりで水が運べるでしょうか。福西がトラックを運転して運ぶことはできますけど(笑)、チームのバランスというのはそういうことを言うのだと思います。http://www.jsgoal.jp/news/00033000/00033958.html

例の「水を運ぶ人」ってやつですが、なんか懐かしいですね。ちょっと前に当ブログコメント欄にて「Footballkingdom」さんがその言葉を使っていて「そういえば、そう言っていたなぁ」って思い出したわけですが、ペルー戦というのはある意味、ジーコ日本代表にオシムが足りないと言っていた、その「水を運ぶ人」をプラスした陣容だったのではないかなぁと思うんですよねぇ。ジーコ日本代表「オシム修正バージョン」とでも言いますか。まぁ中田英は既にいないし、小野、小笠原、福西も選ばれていないわけですし、そもそも約1年前のオシムの言葉を蒸し返して語ることはあまり意味のないことかもしれませんが、このペルー戦というのは「昨年までのオシム日本代表に中村俊輔と高原を加えた」という考え方がある一方、「ジーコ日本代表をオシムが指摘するように水を運ぶ人を入れて改造した」という考え方もあるのではと言いたいわけです。というか、そのほうがしっくりくるのではないかなぁと。で、そういう「視点」から考えた場合、このペルー戦の日本代表の戦い方はどうだったのか? チームのバランスがよかったのでしょうか? ジーコが監督の時に比べて問題点は改善されたのでしょうか? というか、そのそも「水を運ぶ人」って、どういうプレイヤーのことを言うのか? 上のオシムの言葉を読む限り、守備に長けていてチームのバランスをとる人のことを言っているみたいですが、そういう視点からペルー戦のボランチである鈴木啓太と阿部を評価すると合格と言えるんでしょうかねぇ。私的に2人は確かに「守備面でチームのバランス」は取ってはいたかなぁと思うのですが、攻撃面ではちょっともの足りなかったというのが正直な感想なんですが、オシム監督的にそれに関してはどれくらい彼らに求めているのかは不明だったりするわけで。

■正直、ジーコ日本代表時代の「中田英&福西」と比較すると攻撃面ではもの足りない

まぁ、ぶっちゃけて言えば、鈴木啓太も阿部も昨年度Jリーグチャンピオンの浦和所属なわけですし、間違いなく日本を代表する選手だと思います。なので、彼らをボランチとして起用するのは「普通」であり間違っていないと思うんですが、正直、ジーコ日本代表時代の「中田英&福西」と比較すると攻撃面ではもの足りないんですよね。個人的には阿倍の攻撃面での覚醒に期待したいのですが、そのように化ける可能性は極めて低いかなぁ。最終ラインに入る場合が多いし、どちらかといえば攻撃面というより守備面での覚醒のほうが見込めそうかなぁ。鈴木啓太もしかり。正直、鈴木啓太が前線のスペースへオフザボールの動きを見せて走りこんでも、そこからゴールにつながる絵が想像できません。まぁフリーでセンタリングを上げることができれば、それなりにチャンスを演出できるんでしょうけど、正直、攻撃センスみたいなものがあまり感じられないんですよね。まぁあくまで感覚で語っていますが。個人的には中村謙剛に期待かなぁ。彼が「水を運ぶ人」なのかどうかわかりませんが。

■「日本のサッカーの目指す方向性」?

もうひとつ別の事柄がある。特に後半だ。後半やったようなプレイを90分間続けなければならない。それができるかどうかはまた別問題だが、日本のサッカーの目指す方向性が、今日の後半の一部の時間帯に行ったプレイに表れていた。中には、後半の残り時間が少なくなり、相手が白旗を揚げていた時間帯だから、そんなに意味はないとお書きになる方もいらっしゃるかもしれない。だが、そういう事情があったにせよ、ああいうスピーディーなタッチの少ないボール回しを、試合の最初から行わなければならないと思う。(中略)2-0になって、若い3人のプレーヤー(藤本、水野、家長)を投入してから、スピードが上がり、ワンタッチプレーが多くなり、エスプリの利いたプレイが随所に見られるようになった。相手がペルーであっても、こちらがこちらのプレイをできていた。それは皆さん、ご覧になっただろう。それがポジティブな面だ。もちろん、ああいうプレイをどんな相手に対しても90分間続けられることが、簡単だとは私も思ってはいない。だが、あれが理想だと申し上げている。あれが、これからの路線の方向である。だから個人で打開することに頼ってはいけない。集団的なプレイが大事なのだ。そこで意見が一致しなければ、日本のサッカーの方向性にまた違った問題が出てくるだろう。もちろん日本は議会制民主主義の国だから、いろんな意見があっても構わないが。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/kaiken/200703/at00012694.html

オシム監督の試合後の会見からですが、ぶっちゃけ水を運ぶ人なんてどうでもいのかもしれません。「日本のサッカーの目指す方向性」についておっしゃられていますが、要はオシム監督が目指しているのは「ジーコ日本代表に水を運ぶ人を組み入れる」スタイルではなく、こちらということなんでしょう。「スピードが上がり、ワンタッチプレーが多くなり、エスプリの利いたプレイ」ですか。まぁ確かに、そういうプレイがうまく連携できれば崩せるんでしょうし、チャンスも多くなるんでしょうが、何よりも一番大事なのは最後のシュートの精度だったり、センタリングの精度だと思うんですけどね。もちろんシュートを打つまでの形ができなかったり、前線までボールを運べないってのはお話にならないわけですし、「個人で打開することに頼ってはいけない。集団的なプレイが大事」と言うのもその通りだと思います。ですが、集団的なプレイをしても最後のセンタリングとシュートの部分はやっぱ「個人の技術」によるところになると思いますし、その技術を持ってない選手よりも、持っている選手のほうがゴールを期待できると思っちゃうんですよね。個人的には。で、またまたぶっちゃけて言えば、「若い3人のプレーヤーのスピードが上がり、ワンタッチプレーが多くなり、エスプリの利いたプレイ」スタイルよりも、愚鈍でボールを保持する「中村俊輔フィーチャリング、ジーコ日本代表+水を運ぶ人たち」スタイルのが期待できるんですよね。ガセッタさんが「中村を必要としないチーム作りを目指して来たはずではあったが、理想と現実にギャップがあった事は認めざるを得ないところだろう」とおっしゃてますが、それと似た感じとでも言いますか。さらに似たようなことを、おなじみ湯浅氏も言及されてますね。

■「トータルフットボール懐疑論」なる駄文を書きましたが、ペルー戦見た後の感想もそれほど変わらない

理想は、もちろんトータルサッカー。それは、全員守備、全員攻撃という、究極の組織サッカー。そこでは、たまには最終ラインと最前線が入れ替わってしまうこともあるけれど、それでも攻守のバランスが崩れることはない・・。
 その、世界を串刺しにする理想ベクトルは、すでに何十年も変わっていません。ただ、技術的、戦術的、フィジカル的、心理・精神的に「限界」があるから、どうしても「妥協」するしかない。そして、その妥協の「内容」によって、様々なタイプのサッカーが生まれてくるというわけです。さて、日本の場合の「妥協コンテンツ」は・・? http://www.yuasakenji-soccer.com/yuasa/html/topics_4.folder/07_OJ_10.html

結局、オシムが目指す「日本のサッカーの目指す方向性」とはトータルフットボールに近いものだと思うんですが、残念ながらやっぱそれができる技術が日本代表にはないと思うし、現状では「技術がある選手」を生かすスタイルで戦うほうが現実的であると思うんですよね。以前に「トータルフットボール懐疑論」なる駄文を書きましたが、ペルー戦見た後の感想もそれほど変わらないなぁと。1点先制してから、やたらトゥーリオが前線に攻め上がってましたが、その攻め上がりにあまり「効果」を感じなかったんですよね。トゥーリオの攻め上がったスペースは阿部とか鈴木啓太がしっかりとカバーして「攻守のバランスが崩れること」はありませんでしたが、結局はそれだけだったような。なんというか、相手チームにとって嫌なポジションチェンジではなく、自分たちが満足するためだけのポジションチェンジで終わっているとでも言いますか。まぁ確かにトゥーリオの「頭」は武器になるんでしょうし、もともとFWの選手だったんでしたっけ? なので、それなりにFW的な動きもできるんでしょうけど……。あっ、もちろん、そのポジションを90分崩さないことがいいなんて思ってませんし、ポジションチェンジが悪いとも思ってません。ポジションチェンジすることによって、相手のマークを外したり、数的有利な状況を作り出したりすることは非常に大切なことであると思います。そういう効果的なポジションチェンジはどんどんすべきであると思ってますが、意図のない&効果のないポジションチェンジは意味がないと思うんですよね。

■「うまいやつにハードワークさせる」方向でお願いしたい

話がずれましたが、まとめます。要は冒頭で紹介した宇都宮氏のコラムから言葉を拝借すれば「止まったままになっていた時計の針がようやく動き出した」ということなんでしょう。で、ペルー戦を終えて、現段階での理想と現実も見えてきたと思うんですが、それに対してオシムがどう「妥協」することになるのか。もしくは「妥協しない」のか。その答えはアジアカップで導き出されることになるんでしょうかね。とりあえず私的な希望は「ジーコ日本代表+水を運ぶ人(1人)+中村憲剛」かな。まぁ中村俊輔を「戦術で縛る」ってことなのかもしれませんが、「外す」よりはそれだなぁ。本当ならジーコ日本代表で中田英をそうしたかったんですが、オシムにはその「うまいやつにハードワークさせる」方向でお願いしたいね。「ハードワーカーに技術がつくのを期待」するんではなく。あっ、「水を運ぶ人は」必要だとは思いますよ。ただあくまで水を運ぶに専念してください。ウエイターに専念でコックにならなくてよし。料理が下手な人のまずい料理はいりませんから。もちろん、素人でもできる料理くらいはしてもらいたいけど。
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