CL「インテル対ビジャレアル戦」雑感  というか「サイドバックの攻撃参加」を考察

 
サン・シーロで行われたチャンピオンズリーグ準々決勝第1戦のビジャレアル戦を2-1の勝利で終えたあと、インテルのロベルト・マンチーニ監督は次のようにコメントした。
「3点目を決めることができていればもっと良かった。前半1分に不注意から失点を許し、苦しい展開で始まったことを考えると、良い結果だと考えることもできる。選手たちはうまく立ち直ってすぐに2、3回のゴールチャンスを作り、その後は良いプレイをしていた。ビジャレアルは堅実なチームだ。それは分かっていた」http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/headlines/20060330-00000018-spnavi-spo.html

言うまでもなくサッカーでは「1点」は非常に重いわけで、マンチーニが言うとおり前半早々に失点してしまったインテルからすれば、よく逆転したと思うし「よい結果」であったのは間違いないところでしょう。って、わけで試合を簡単に振り返ってみようと思うんですが…、まずその前に両チームのメンバーについて。両チーム合わせてアルゼンチン代表が何人いるのでしょうか(笑)? ベロン、カンビアッソ、サムエル、サネッティ(以上インテル)、リケルメ、ソリン(以上ビジャレアル)の6人が、この試合に出場していたわけですが、例えば「ベロン対リケルメ」「リケルメ対サネッティ」「ソリン対サネッティ」などなど、代表チーム同士でのマッチアップが試合中いたるところであるわけですよ。それを見るだけでも楽しいわけですが、特に調味深かったのが「インテルの右SBサネッティとビジャレアルの左SBソリン」のマッチアップ&お互いのプレイスタイルの違いでした。

まずサネッティですが、この試合のパフォーマンスはすばらしかったです。サイドバックの位置から積極的にドリブルを仕掛けて、ペナルティエリア中央付近まで独力で持っていったシーンが2度くらいありました。50メートルくらいのドリブル突破を仕掛けていたと思うんですが、まるでボールが足に張り付いているようなドリブル突破は見事。以下の図は前半30分のシーンから。ドリブルで切れ込んでいって逆サイドの中盤のセーザルへスルーパスしているんですが、サイドバックの選手がここまで積極的に自由に攻撃参加して、攻撃を演出しているのはやっぱすごいと思ってしまうわけですよ。



       ←(パス)←○サネッティ
  ○セーザル     (ドリブルで逆サイドに行ってセーザルへパス)
  (右SH) 



                                    ○サネッティ
                                    (SBの位置)

それは「すばらしいドリブル技術」をサネッティが持っているから可能としているんでしょうが、技術だけでなく「サイドバックの位置からからドリブルで仕掛けるという、その「メンタル」的なものがすごいと思ってしまうわけですよ。で、そのサイドバックの攻撃参加の「メンタル」について、ちょうどスポニチのコラムで戸塚氏がこんな記事を書かれてました。

あのレッズ戦(3月4日開幕戦)で加地がゴール前へ飛び出していったのは、チームが負けていることと無関係でなかったと思う。負けているからといって無理やり攻撃参加はしないだろうが、負けているからこそ沸き上がってきた「行かなきゃ」という気持ちはあったはずだ。
 スコアが0-0のときからその気持ちを持っていてほしい--それが、僕の希望だ。タッチライン際でいつも相手のスキをうかがい、あわよくばウラを突くぞ、いつでも突いてやるぞという駆け引きを、これまで以上にやってほしいのだ。相手がこないから出て行くのではなく、もっと能動的な駆け引きをしていってほしいのである。
 そのためのひとつの方法として、MF主導ではなく自分主導の攻め上がりを考えてもいいのではないだろうか。チームがボールをつないでいく過程で攻め上がっていくだけでなく、オレが走るから出してくれというパスを要求してもいいと思うのだ。フィンランド戦では小野から加地へのそんなボールが多かったし、インド戦の加地は流れに乗って攻め上がっていくパターンが多かった。
 サイドバックが前へ出やすい、出にくいということに関わらず、僕のなかではサイドアタックが重要という認識は動かない。加地と三都主には決定的な仕事を期待している。それだけに彼らの動きはとても重要で、少しぐらい常識から外れたプレイがあってもいいと僕は思っている。
http://www.sponichi.co.jp/wsplus/column_n/04196.html

私は戸塚氏の意見に賛成で、「少しぐらい常識から外れたプレイがあってもいい」派なんですが、自らドリブルで運んで「攻撃をリードする」ようなサネッティのプレイは、もう規格外とでも言いますか(笑)。戸塚氏の言葉で言えば「少しぐらいの常識外れ」でなく、「かなりの常識外れなプレイ」って言うのは言いすぎでしょうか? ちなみにこの戸塚氏の意見に対して西部氏は以下のように述べていたりします。

戸塚さんはフィンランド戦、インド戦の加地の攻め上がりを評価していたが、この2試合こそ僕が前回書いた「ボールが収まっている」状態である。戸塚さんは「少しぐらい常識から外れても」「自分主導の攻め上がりを」という意見だが、僕は「無謀なものは無謀」としか考えない。上がれる状況なら上がる。そうでないなら上がらない。サイドバックの自主性よりも、上がれる状況を作れているかどうかが問題ではないだろうか。
 主体的に攻撃する「気持ち」は大事だが、状況を無視して気持ち優先で動かれても周囲が迷惑なだけだ。http://www.sponichi.co.jp/wsplus/column_n/04445.html

西部氏の言うことも正しいと思います。要は「自主性」も大切だし「技術」も「状況判断」も必要ってことだと思うんですが、そのとおりだと思います。ただ、なんと言いますかその考えは、残念ながら「日本人のサッカー論」からすると、っていう「注意書き」が必要って気がしてしまうわけですよ日本人からすると「無謀と思えるプレイ」が、南米&欧州のサッカー大国からすれば「普通のプレイ」なんじゃないかって、サネッティのプレイを見ていると感じてしまうわけです。もちろんサネッティの攻め上がったあとは「カンビアッソ」とかがしっかりカバーしているんでしょうが、もうそういう「自主性&リスク回避」以前の問題として「サイドバックの攻撃参加」に対する考えが根本的に日本とサッカー大国では「違いがある」のではないかって思ってしまうわけですよ。もちろんサイドバックに「守備」を要求しているのは言うまでもないことですし、きちんとこなしているとも思います。ただ、サイドバックを単に「守備」するだけの存在でなく、「攻撃のキーマン」として考えていて、その「攻撃時にサイドバックに期待するプレイの感覚」が日本と世界では違うのではないかと思ってしまうわけですよ。

って、かなり話が脱線してしまいましたんで話を戻します、ってまたサイドバックが出てくるわけですが(笑)。続いてビジャレアルの左SBソリンについて。この選手もアルゼンチン代表なんですが、本職は中盤(左ハーフ)?ですが、ボランチのサイドバックもできるマルチプレイヤー。で、この試合ではサイドバックでプレイしていたんですが、本職ではないせいか守備はイマイチに感じました。で、そのソリンを「穴」と見たのか、インテルマンチーニが執拗に狙ってゴールに結びつけちゃうんですよね。

【インテル1点目】GKからのキックをべロンとソリンが競って、そのこぼれダマを右サイドのスタンコビッチへ展開。ソリンがベロンのところに行ってしまっていたため「フリー」でスタンコビッチが切れ込んでセンタリング。これがアドリアーノに渡り、見事な反転シュートが決まってインテルが同点とします。



              ○アドリアーノ            (フリー)
                                  ↑
                                 ○スタンコビッチ
                        ↓        ↑
                       ●ソリン      ↑
                         ○ベロン


このシーン、スタンコビッチをフリーにしてしまったのがビジャレアルのミスであったと思うのですが、SBソリンとSHカレハの守備の連携がうまくいってなかったように思えました。スタンコビッチとサネッティの攻撃参加に対してマークがあいまいで、何度もインテルに左サイドを突破されていたんですよね。で、インテルの逆転ゴールも同じく「ビジャレアルの左サイド」から生まれることになります。

【インテル2点目】左サイドからサイドチェンジのパスが入り、コバチャビッチがトラップを利用してソリンを抜き去り、センタリング。これをオフサイドギリギリの位置からマルティンスが飛び込んでゴールに押し込み逆転。またしてもスタンコビッチの突破からゴールが生まれたわけですが、スタンコビッチが好調であったのはもちろんですが、やっぱソリンの守備のまずさがゴールに結びついたと考えるのが普通でしょうか?

最悪の例はインテルの2点目、ソリンがスタンコビッチに頭の上をループで抜かれたシーン。あのプレイはスペインではソンブレロ(帽子)と呼ばれる。見た目は芸術的だが実戦向きのプレイではない。「ボールをふわっと浮かせて抜き、それを再びトラップして次のプレイに移る」という一連のプレイのスローモーさが、現代の速いサッカーでは時代遅れになっているからだ。少年サッカーレベルでも次のプレイに入る前にまずプレスされて潰されてしまう。それをペナルティエリア付近でやられて、しかもセンタリングまで許してしまうビジャレアルの守備はどうなっているのか? アルソのカットに入る動きはあまりにも遅く、抜かれたソリンがボーっと立っていたのも理解ができない。抜かれたら素早く次のプレーヤーが出て行く、その間にその後ろに回り込むのがカバーリングの基本なのに。http://www.ocn.ne.jp/uefa/cl/report/kimura_0329.html
木村氏もソリンのプレイに対して苦言されてます。確かに軽率なプレイではあったと思いますが、そもそもソリンを何故にサイドバックで起用したのか? っことから考えるべきであると思ってたりするわけです。ソリンをSBで起用した目的は、たぶん「守備にはある程度目を瞑っても、攻撃に期待」であったと思ってます。ビジャレアル的にはある程度、守備のまずさは覚悟の上での「ソリンのSB」起用だったと。木村氏が同じコラムで以下のように表現されてます。
たとえば、前半ビジャレアルの左サイドをインテルのサネッティが対角線に何度となく突破した。あれがロナウディーニョならば納得が行く。だが、リズムチェンジを交えただけのスラロームに、3人でも4人でも楽々抜かれるのはあまりに甘くないか。サイドアタックを警戒したビジャレアルが中にスペースを空けていたのは確かである。左サイドバック、ソリンのアウェイとは思えない無謀な攻撃参加――何せちょっと目を離すとトップ下まで行っている――にも助けられた。が、それ以上に体を当てに行く激しさ、執着力が欠けていた。抜かれたら他人任せにして足を止めてしまう。ファールでも何でも止めるのが、チャンピオンズリーグのシビアな舞台というものではないか。http://www.ocn.ne.jp/uefa/cl/report/kimura_0329.html

「左サイドバック、ソリンのアウェイとは思えない無謀な攻撃参加――何せちょっと目を離すとトップ下まで行っている」と表現されてますが、確かにアウェイでの戦いと考えると無謀なのかもしれませんが、ビジャレアルのソリンSB起用の「狙い」はこのプレイであったのは間違いないと思ってます。ソリンの得意とするプレイがこの「気がついたらゴール前にいる」という積極果敢な攻撃参加なわけです。これはアルゼンチン代表でも同様。この試合でも一度、リケルメのセンタリングにSBソリンのソリンがシュートという惜しいシーンがありましたが、こういうプレイはソリンの「自主性」から生まれたプレイであると思うし、監督が期待して「攻撃参加することを認めている」プレイでもあると思っているわけです。結果的にはソリンの攻撃参加は実らず、SBでの起用が裏目に出たようにも見えますが「敗戦の問題」はそこなんでしょうか? ちなみにソリンの守備は下手でしたが、「ソリンの無謀な攻撃参加」が実質的に失点に結びついたわけでありませんでした。…「無謀な攻撃参加」と木村氏は言いますが、はたして本当にそうなんでしょうか? どうもそのあたりの「サイドバックの攻撃」に対する考え方の違いみたいなものを感じてしまうんですが、どうなんでしょうけね? もちろん海外のサッカー一流国&クラブによっても、SBへの考えの「違い」はあると思いますし、「ソリンとサネッティ」というアルゼンチンが生んだ怪物SBだけが規格外なのかもしれませんが。

以上、仕事で忙しい予定でしたが、思わぬ時間ができたので書いたCL「インテル対ビジャレアル戦」の雑感。というより、アルゼンチンの生んだ怪物SB論。まとまりませんでしたが、まぁインテル勝っておめでとうということです。




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