プレミアリーグ第30節「チェルシー対ウエストハム戦」雑感  「4-1-3-2」変更の意図は!?

■危機的な状況下においても慌てずに地に足をつけてしっかりと戦えた選手と監督に拍手!

前半10分に先制されて、16分にマニシェが退場。状況的には絶体絶命のピンチで当然ピッチ上の選手たちには必要以上にプレッシャーがかかる展開でしたが、そういう危機的な状況下においても慌てずに地に足をつけてしっかりと戦えたことが何よりもすばらしかったように感じました。

 2-1で逆転した後も2人のストライカーをそのままプレイさせた。マニシェが退場になった後も交代をさせなかったのは、自信を示したかったからだ。
私たちは10人で闘ったが、まるで12人で闘っていたかのようだった。まあ、別に難しいことではなかった。私たちはこれまでにも何度か10人になったことがあるからな。たまにはあることだ。毎月2試合のペースで10人になってるんじゃないか?(笑) http://hinakiuk.sakura.ne.jp/blog/2006/04/09_2051.php

ヒナキさんのブログから「モウリーニョのコメント」。確かに、このところ10人で戦うことが多いんで、そういった点から考えると難しいことではなかったのかもしれませんが(笑)、マニシェ退場後に交代させなかったのは「自信を示したかった(?)」と言っている点が非常に興味深いところ。要は、「たとえ今1点負けていて、しかも1人少ない状況であっても、おれはお前らが逆転してくれることを信じているんで、メンバー変更なしだ」というモウリーニョのピッチ上の選手たちへのメッセージであったということだと思うんですが、それがいい方向へ作用したということでしょうかねぇ? まぁそういうメッセージの問題と合わせて、モウリーニョ的にこの試合では「簡単に選手をいじれない理由」もあったと思うんですが…、ってことで試合を振り返ってみます。

■スタメン&システム:ウインガーなしの「4-1-3-2」へ変更! モウリーニョの意図は!?

まずシステムですが…、なんと驚きの「ウインガーなしの4-1-3-2」へ変更。ロッベン、ジョーコールなどのウインガーはベンチスタートで、ドログバ&クレスポの2トップに、エシエン、マニシェ、ランパード、マケレレの4人が中盤という形にモウリーニョが大胆にシステム&選手を変えて臨んできました。このシステム変更の意図は、果たしてどういうものなのか? その本当の理由モウリーニョの頭の中にだけあるのでしょうが、いくつかその理由を考えてみますとこんな感じ?

①「4-3-3」が相手に研究されこのところ機能してないので、相手チームを欺くため&チームに刺激を与えるため。
②ポルトでのメインシステム&チェルシー就任当時に採用していた「4-1-3-2」(4-3-1-2?)に戻して「原点」に戻りたかったため?
③冬に補強した「マニシェ」の調子がよかった、もしくは(最後の?)チャンスを与えたかったため? 
④モウリーニョがこのところの選手たちの低調なパフォーマンスに怒って「主力に危機感を与えたかった」ため?
⑤ドログバ&クレスポの「2トップ」がより生きるシステムを模索していて、それがこの「4-1-3-2」だと思ったため。

まだ他にも考えられるかもしれませんが、大きく考えるとこんなところ? もちろん全然違う理由からの変更かもしれませんしその本当の理由はわかりませんが、どれにせよモウリーニョが「戦い方を変えてきた」のは確かでした。

■前半①:「変えてきた」チェルシーが機能!? 「4-1-3-2」からの攻撃の形とは!?

前半。その「変えてきた」チェルシーが押し気味に試合を進めます。トップ下的な位置に入ったマニシェとランパード&エシエンという中盤の選手が、積極的にパスをつないで前線にも顔を出してチャンスを演出します。前半4分にこんなシーンがありました。右SBのジェレミからドログバへロングボールが入り、これをドログバが前線で落としてサポートに入ったマニシェへ。さらに左サイドのスペースへ走る組んだドログバへマニシェがスルーパス。左サイドでパスを受けたドログバが中央センタリングし、DFにクリアされクレスポには合わないものの、後方から走りこんできたエシエンがミドルシュート。このシーンではシュートは惜しくも枠には飛ばなかったんですが、これはこの日の「4-1-3-2」での1つの形であったと思う次第です。




 ※左サイド                 ●相手GK

 ○ドログバ(またはクレスポ)←     ○クレスポ(またはドログバ)
               
                  ↑              ↑
                  ○マニシェ(ゴール前へ) ○エシエン(ゴール前へ)
                  ↑              ↑

                   ○ランパード、○マケレレ(セカンドボールを拾う)※↑攻撃方向

これは「4-3-1-2」とか「ボックス4-2-2-2」とかを採用するチームでよくやる「オーソドックスな形」と言えるかもしれませんが、要は2トップのうちの1人のFWがサイドに流れて「チャンスメイカー」としてセンタリングを上げ、その代わりに2列目以降から選手がゴール前に入ってFW的にゴールを狙うというもの。まぁ新しくもなんともない「崩し方」だと思いますが、普段は両サイドにウインガーという「サイドの専門家」を置いているチェルシー的には目新しいやり方といえるのかも知れません。要はウインガーを置かない代わりに、FWもしくはMFの選手が「流れなかから、動いてウイング的にプレイ」するってことがキモなんですが、これはサイドから崩す場合の話。中央突破ではまた別の話になるわけですが、両サイドにウイングを置くいつもの「4-3-3」に比べると、より「選手の流動的な動き」というか「ポジションチェンジを駆使した攻撃」が問われるシステムと言えるのかもしれません。


【4-3-3時の主な攻撃時の動き】
                  ○チェフ

  ○ジェレミ     ○ギャラス    ○テリー    ○デルオルノ
 
                  ○マケレレ
  ↑                               ↑
  ↑      ○エシエン        ○ランパード   ↑
 ○ジョーコール          ↑             ○ロッベン
  ↓                ○ドログバ         ↓
                    ↓

【4-1-3-2時の主な攻撃時の動き】
                ○チェフ

○ジェレミ     ○ギャラス    ○テリー    ○デルオルノ
              
                ○マケレレ
                                
    ←○エシエン→  ←○マニシェ→  ←○ランパード→
     ↓           ↓          ↓

           ←○クレスポ    ○ドログバ→    
            ↓         ↓

上の図は「4-3-3」と「4-1-3-2」での攻撃陣の動きの違いを極端に書いたものですが、ウイングがいる「4-3-3」はどちらかと言うと選手は縦方向への動きが多くなり、「ポジションチャンジからの攻撃」より「ポジション固定の1対1」重視のシステムと言えるのでしょうか? もちろん「4-3-3」でも、ワントップのFWがサイドに流れてセンタリングを上げるなど「ポジションチェンジ」から崩しはあるわけですが、基本的には両サイドのウインガーが「サイドに張って」個人技で崩してセンタリングして、中央でセンターFWが「ある程度、中央で張って待って」ゴールを狙うという形がオーソドックス。それに対して「4-1-3-2」では「FWがウイング」となったり、「MFがウイングやFWとなったり」してポジションを積極的に変えながら相手を崩していくのが基本? まぁ、こんな「違い」はあえて言うまでもないことかもしれませんが、一応、参考程度というか確認の為に書いておきました。ってことで試合に戻ります。

■前半➁:ウエストハムがセットプレイから先制! さらにマニシェがやってしまいました

前半10分にウエストハムが先制。CKからコリンズがニアサイドで合わせた見事なヘディングシュートでしたが、マークについていたデルオルノの反応が遅く、ニアサイドの「ソーン」をカバーしていたランパードの対応も中途半端だったことは反省点でしょうか? まぁ守備のミスというよりも、ベナユンのセンタリングがすばらしかったということでしょう。先制されたチェルシーが、さらに積極的に攻めに出ます。11分にはFKからデルオルノが左サイドを抜け出しセンタリング。惜しくも中央の2トップに合いませんでしたが、セカンドボールからパスを回して再びランパ-ドが左からセンタリング。エシエンがゴール中央でドンピシャでヘディングするも枠を捉えず。さらに続いて、エシエン&マニシェのパス回しからドログバが「左サイド」を抜けてセンタリング。ゴール前に上がったマニシェがシュートするも惜しくもクロスバーに当たり、跳ね返ったボールをエシエンが再びシュートするもののこれまたゴールならず。

いい形は作るものの、MF「マニシェ&エシエン」のフィニッシュの精度がなく、なかなか同点に追いつくことができません。先程も述べたように「4-1-3-2」の場合はポジションチェンジからの崩しが多くなるわけで、このマニシェ&エシエンのように「MF→FW」という役割の変化が求められます。この試合、2人のこうした「オフザボールの動き」はすばらしかったのですが、FWとしてのシュートの精度という「オンザボールのパフォーマンス」はいまひとつでした(もうこの話題はしつこいですね)。

■前半③:10人になって奮起!? ドログバとクレスポを中心に反撃&逆転!?

リードされているものの「攻撃ではいい形」を作れていたチェルシーですが、前半16分にアクシデントが発生してしまいます。なんとマニシェが「足裏見せたタックル」で一発退場。厳しい判定と思いましたが、まぁ「足裏」を見せていたのは確かですし、レッドは致し方ないところか? この日のマニシェは「フィニッシュ以外」ではいいパフォーマンスを見せていたように感じました。運動量もよく、なによりもボールに絡む回数が多く、前線でよいアクセントとなっていたよう思えたんですよね。まぁ以前の「ポルト」と似たシステムであったので、やりやすかったところもあったのかもしれませんが、チェルシーに来てから最高のパフォーマンスであったのは確かでしょう。それだけに「退場」は残念でしたが、本人もショックだったんでしょうね(泣いていたようにも見えた)。今後の奮起に期待したいです。ってわけで、早くも10人となってしまったチェルシー。なんか「いやーな空気」が流れていたんですが、それを変えたのがドログバでした。

前半29分。ランパードの後方からのロングパスに、ドログバがオフサイドラインのギリギリのところを抜けてGKと1対1へ。1度はシュートを弾かれるものの、再度シュートを流し込んでチェルシーが同点に追いつきます。マニシェがいなくなり「中盤の積極的な仕掛け」をしにくい状況であったんですが、その状況を救ったのがドログバの「個の力」であり、パスしたランパードの「個の力」でありました。もちろん、チームとしての「組織の力」があるがゆえに、「個のパフォーマンス」が生きたわけですが、ランパードの「パスのセンス」&ドログバの「動き出し&トラップ&シュート」という個の技術はすばらしかったと思いました。さらに31分に今度はクレスポが決めます。右サイドで起点を作ってドログバがペナルティエリアでボールを受けてミドルシュート。これがDFにあたりゴール前に詰めていたクレスポの元へ転がって、そのままシュートしてゴールネットへ突き刺さります。「シュート」を狙ったドログバの判断はすばらしかったですし、ゴール前に詰めていた&シュートを確実に決めたクレスポのパフォーマンスもすばらしかったです。こういう一見何気ないシュートですが、実際問題として決めるのは簡単ではないわけです。決定機を外してしまった「マニシェ&エシエン」と、決定機を確実に決めた「ドログバ&クレスポ」の差が「FWとMF」の差なのかもしれませんが、ただ今の時代、MFだってある程度決定力がないと厳しいと思うんですよねぇ。まぁそれについては後ほど。

■後半①:チェルシーがさらなる追加点! テリーのシュートは見事でした!

後半。メンバー変更なし。ウエストハムがより激しく「当たりにきた」ように思えましたが、さらなる追加点を上げたのはチェルシーでした。後半54分。CK崩れから左サイドでエシエンが見事なフェイントで相手を交わしてペナルティ内に残っていたギャラスへパス。ギャラスがシュートするもののこれまたボールはクロスバー。ですが跳ね返ったボールをこれまた上がっていたテリーが「見事なボレーシュート」を決めてくれます。いやぁ、このテリーのボレーは見事でした。ボールを浮かせないでセオリー通りシュートを叩きつけて「ワンバウンド」でネゥトに突き刺すんですが、DFとは思えないすばらしいシュートでした。まぁ今の時代、DFだって「決定力が必要」だと思っていますので、その点から考えると驚いてはいけないのかもしれませんが(笑)、すばらしいゴールはすばらしいってことで。何がすばらしいって、ゴール前のシュートシーンでもあわてない「落ち着き」がすばらしかったと思いました。モウリーニョが監督となって、テリーは間違いなく「うまくなった」と思ってます。それはDF面のみならず、パスやドリブルやシュートという攻撃面での「技術」が飛躍的に向上したのではないかと。さらなる進化を遂げてもっと決定力あるDFになってほしいです。もちろん、一番重要なのは決定力でなく、「ゴールを与えないDF力」だと思いますが。

■後半②:ロッベン投入で4点目! というか決めたギャラスが偉いです!

このゴールでほぼ「勝敗の行方」は決まった感じで、少しペースダウンして試合を有利に進めるチェルシー。67分にはクレスポに代えてロッベンを投入しますが、まぁモウリーニョ的には、より「動ける選手」を投入したくらいの感じか? で、そのロッベンが得意のドリブルを駆使してチェルシー攻撃陣をリードしていくんですが、69分になんと4点目が決まることになります。ロッベンがもらった右サイドのFK。そのままロッベンが放り込んだボールは、左サイド奥でウエストハムDFに当たってゴール前に。コレをドログバが落としてゴール前にいたギャラスが押し込んで4点目。得意のセットプレイからのゴールが決まり、これで勝負ありでした。決めたギャラスは今期何ゴール目? そういえばテリーのコラムか何かで「(テリーが)ギャラスとゴール数を争っている」というのを読んだ記憶があるのですが、この試合ではそのライバル同士の2人が仲良くゴールというすばらしい結果となりました。ギャラスは、こういうセットプレイのこぼれダマを詰めるの本当にうまいんですよね。テリー同様、今後も期待したいです。

■総括:モウリーニョのシステム変更が功を奏したわけですが…、結果よければすべてよし!

ってわけで、試合はこのまま終了。4-1でチェルシーが勝利するのですが、見事な逆転勝利であったと思いました。「4-1-3-2」への変更、先取点を取られる、マニシェ退場などいろいろとあった試合でしたが、結果的には「ウインガーなしの4-1-3-2」で臨んだことが、いろいろな面で好影響&好結果をもたらしたように思っていたりしてます。

マニシェ退場後も慌てなかったのは、たぶん「4-3-3」というガチガチのフォーメーションでなく「流動的な4-1-3-2」であったからのような気がしてますし、ドログバ&クレスポのゴールが生まれたのも「流動的で相手DFのマーク」が付きにくかった点も影響したのではないかと思うんですよね。ドログバのいいパフォーマンス(積極性?)を引き出せたのも、このシステム変更の影響であった気もしますし、そもそもウエストハムDF陣がシステム変更を想定してなかったのが利いたのかもしれません。そういった点ではモウリーニョの作戦勝ちであったといえるのかもしれませんが、まぁもちろんそれは「勝利という結果」を残せたからに他なりません。「4-1-3-2」で結果的に4ゴール生まれましたが、前半早々、マニシェやエシエンが外しまくっていたように、一歩間違えれば「決定力不足」に陥っていた可能性も無きにしも非ずなわけです。「FW→ウイング」「MF→FW」というようなポジションチェンジを駆使した崩しが多くなる「4-1-3-2」においては、さまざまなポジションに対応できる「マルチロール的な働き」が求められると思うんで、特に「2列目、3列目」のゴール前での「FW的な動き」や「決定力」はポイントとなると思うんですよね。まぁどんなシステムでも、MFやDFの選手にも「決定力」が求められるのは同じといえば同じかもしれませんがね。というわけで、優勝まで3勝? たぶん今後のモウリーニョはお馴染み「4-3-3」をメインにしながら、状況によっていろいろなシステムを織り交ぜていくことになることでしょうが、相手チームがそれで頭を悩ませていただければ幸いです。
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