ジーコ日本代表はW杯は「3バック」!? 今こそ考えるジーコの守備戦術と「フラット3」との違い!

■初戦3バックを支持する理由!? それは単純に「CBがあらかじめ3人」いる方が、守備が安定すると思うから

どうやら「3バック」での守備練習をしたみたいですね。たぶん、まだジーコは初戦を3バックで行くか、4バックで行くか決めてないと思うんですが、個人的には、オーストラリア戦を「3バック」でスタートすることは悪くないと思ってます。その理由は、単純に「CBがあらかじめ3人」いる方が、守備が安定すると思うからです。

そこで指示を受けた中沢は「ダブルボランチが3バックのラインに吸収されないように、と言われた。せっかく3枚いるのに下がっては攻めきれない。守るためにやっているわけではない」と、3バックが専守のためではないという指揮官の意図を披露。ボランチの中田英も攻撃しやすい態勢を視野に入れた“新3バック”へと磨き上げる計画だ。http://www.sanspo.com/soccer/top/st200605/st2006052201.html

3バックが専守でないという意図も確かにあるんでしょうけど、逆に言えば、「3枚を常時中央の守備に置きたい」という意図のほうがメインな気がしてます。4バックで相手FWがサイドに流れた場合、中澤なり宮本なりCBの1人がその動きに対応するため「サイドに流れる」場合も出てくるわけですが、その時はボランチなりSBなりがCBの位置に入って「センターバックの代役」として守備するのが基本だと思ってます。で、単に守備力の問題だけで考えてみますと、守備のスペシャリストの「CB3枚」があらかじめ中央にいるほうが、「CB2枚プラス、状況によりボランチorSBがカバー」よりも強固なのは間違いないわけです。ボランチやSBのカバーリングの連携が完璧にできて、しかもそのボランチやSBが「CB並みの守備力」があれば3バックと変わらず守れると思いますが、そういうことができるプレイヤーは稀であると思うのですよね。というわけで、「3バック」を押す理由の第一は、当たり前ですがその方がCBが3人いて「中央の守備が安定」するからであり、ボランチがカバーリングの守備に追われるケースが少なくなり、より攻撃に専念できるから。もちろん4バックの方が、単純に攻撃の枚数が一枚増えるわけで「攻撃的」であるのは言うまでもないですし、攻守のバランスも4バックの方がいいとは思います。ですが、こと守備面だけをクローズアップして考えてみますと「3バック」の方が固いと思いますし、高さを武器として持つオーストラリア代表には「3バック」のほうがいいと思いますし、負けられない初戦の入り方としては守備から臨んだ方がいいような気がするんですよね。まぁ、「3バック」「4バック」で行くかは考え方次第だと思いますし、ジーコがどちらを採用するかは楽しみですが…。ってことで、ここからは、その他「守備」について気ガついたことなど(って以前も守備について書いたような。まぁいいか。)。

■ジーコ日本代表の守備戦術チェック①:サイドの裏を突かれたときのカバーリングについて!?

W杯初戦で対戦するオーストラリアを意識したのか、高さのある控え組のFW巻(千葉)にロングスローや長いクロスを入れ、こぼれ球への対応を徹底。サイドの裏を突かれたときのカバリングも確認し、DF中沢(横浜M)は「(サイド裏に)ボランチがいくのか、センターバックがいくのかを話し合った」と説明した。  http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/headlines/20060521-00000075-jij-spo.html

続いて、サイドの裏を突かれたときのカバーリングについてですが、ボランチが行くべきかセンターバックが行くべきか話し合ったという点について。これは状況によるんでしょうけど、この問題に行く前に、まずジーコ日本代表の最終ラインについて再度考えてみたいと思います。

「1人が余る」が決まりごとで、最終ラインをフラットラインにしないで「裏を突かれない」ような守り方をするのがジーコ日本代表の基本的な守り方。ここが前任のトルシエ氏の守備との大きな違いであり、その狙いとメリットとデメリットはそれぞれあるわけですが、ここではそれぞれの守備戦術を特に「サイドの守り方」という観点から考えてみたいと思います。

ジーコ日本代表の守備では、「サイドのスペース」は大きく開くことになります。これは最終ラインをフラット「オフサイドトラップ」を狙うことよりも1人余らせて「カバーリング」して守ることの影響!? 簡単に図にするとこんな感じです。



【ジーコ日本代表の3バック時のサイドのスペース】

          ※オンサイド           ○宮本         ※オンサイド

                 ○坪井                ○中澤

                 ●アロイージ             ●ヴィドゥカ


オーストラリア代表のアロイージ&ビドゥカ2トップに対する3バックでの守り方ということで書いてみました。2トップには坪井と中澤がそれぞれ対応。宮本はスウィーパー的に「余る」のが基本です。その結果、加地&サントスの裏のスペースというか、スウィーパー宮本の「横のスペース」がオンサイドとなるわけです。宮本の位置が最終ラインとなるため、中澤&坪井の後方のスペースはオンサイドとなり、そこをビドゥカとアロイージに使われるケースが出てくるわけです。これは単純に考えると、宮本の横のスペースに相手が使える「スペースを与えて」も、DFが「カバーして対応」することで相手FWを自由にさせないという守備とでも言えますでしょうか?

で、一方、トルシエ時の、いわゆる「フラット3」をこれまた単純に図にしてみます…。



【トルシエ時代のフラット守備システムでのサイドのスペース】                  

                           ※オフサイド
 
               ○坪井         ○宮本        ○中澤      
  
              ●アロイージ                    ●ビドゥカ
 

単純に書けばこんな感じ。宮本が余らずフラットに並んで、中澤&坪井の後ろ側のスペースは「オフサイドのスペース」となります。もちろんタイミングよく2トップが飛び出してオフサイドにならなければ、容易にサイドで基点を作れますが、ジーコの「1人余る」に比べてラインコントロールを仕掛けるフラットラインではサイドで基点が作りにくいとでも言いますか。もちろん常時フラットなわけではないでしょうし、状況によってカバーリング守備をするわけですが、1人余らせて「相手FWが使えるスペースの形成はあきらめる」よりは、フラットにして「相手FWが使えるスペースを消せ」というのがフラットラインのコンセプトとでも言いましょうか(ただしこれでオフサイドが取れればグッドなんですが、オフサイドトラップをミスって、最終ラインを破られてしまったら「カバーする選手がいない」わけで、ピンチの状況を迎える場合もあるのは言うまでもないところです)。

さて、何を今さらわかりきったことを書いているのかと突っ込まれそうですが、要はジーコ日本代表の「1人余るDFライン」はフラットなDFラインと比べると、相手攻撃陣にサイドで基点を作られやすいシステムであるということを言いたいわけです。で、要はジーコ日本代表の守備ではサイドを相手に突かれるのはある程度「しかたがない」ことで、それはOKであると。ただ、「サイドを突かれた後」に、うまくカバーリングで対処して守ろうという戦術だと思うんですよ。それを踏まえて中澤のコメントを再度見てみますと…。

中澤「(サイド裏に)ボランチがいくのか、センターバックがいくのかを話し合った」
 という感じで「サイドの裏」を突かれた場合にどうするかということを言及してます。これはまた簡単な図にするとこんな感じ。オーストアラリア代表のFWビドゥカが、サイドに(サントスの裏のスペース)へ流れるとします。



【ジーコ日本代表3バックがサイドを突かれた場合】                   
                        ○宮本      →○中澤→    ●ビドゥカ
                               
                                             ↑
             ○坪井  ●アロイージ         →○ボランチ中田英         
                                                ○サントス 

宮本が1人余っているので「オフサイド」にはなりにくく、パスミスやインターセプトされなければビドゥカはサイドでボールを受けて基点となるんですが、こういう状況の時に誰がビドゥカをマークするのかについて中澤は話し合ったと言っているのでしょう(たぶん)。要は中澤がそのままマークするのか、それとも中田英や福西というボランチがカバーするのか? で、こちらの記事では「話し合った結果」については書いてませんが、普通に考えれば「CBがサイドをカバーする」のがスムーズだと思いますし、特に相手FWがサイドに流れた場合はCBがそのままマンマーク気味に対応するのがベストであると個人的には思ってます。もちろん状況によるんでしょう。例えば、FWでなく「MFの選手やSBの選手」がサイドに流れた場合は、ボランチなり攻撃的MFなりがこれまた「マンマーク気味」にサイドをカバーするのがスムースであると思うんですが、CBの方が近くにいてマークしやすいならそちらに任せるべきであるとも思いますしね。要はサイドに流れる選手に対しては「マンマーク的に対応」するのが現実的であり、そのために空いてしまったスペースは「ボランチなりがカバー」するというのが基本的な守り方だと言いたいわけです。で、この「ボランチの守備の仕方」がジーコ日本代表ではけっこう大きなポイントとなっているのは言うまでもないところなんですが…。で、これは結局、冒頭の「3バック」「4バック」のところでも述べたんですが、CBがサイドに流れて対処するのは「1人余る守備」では必然なわけで、そうなった場合にボランチやSBがセンターに入ってカバーすることになるわけです。それは人数的な問題や理論上はOKなんですが、その状況でセンタリングを入れられた場合に中田英や福西や加地がセンターバックとしてオーストラリア代表なりクロアチア代表なりの「高さ」にゴール前で勝てるのかどうかと考えてみますと…、正直、厳しいなぁと思うんですよね。もちろん、うまく体を入れることで「シュートを打たせない守備対応」もできるとは思いますし、そもそも宮本、坪井、田中が「高さ」で勝てるのかといわれてしまえば「……」なところもあるんですが(笑)。まぁ私は高さは変わらなくても「守備のスペシャリスト」ということで宮本、坪井、田中を押しますし、守備なら3バックを押すわけですがね。

※ここまで書いてなんですが、「フラット」でも「1人余る」でも3バックならばWBの後ろのスペースを突かれるのは変わらないと言われれば、その通りと答えるわけで(笑)。

■ジーコ日本代表の守備戦術チェック②:プレッシングかゾーンで守るかについて!?

この日は、数的不利な状況での守備を反復。加地が守備につけない状況で、攻撃を受けたときには、中田英が対応することを確認。そこで加地は「ボールにいかないで、スペースを埋めるようにして」と求めた。中田英は1対1に強いため、数的不利な状況でも、ボールを奪いにいく傾向がある。だがボールを奪えなければ、決定機を与える危険性が高い。宮本は「ボランチ1人じゃ守れない。出ていかないで!」と訴えた。中田英に「ワイドに展開したいから大きく開いてくれ」と指示された三都主は「プレースタイルを変えたくない」と反発した。http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/headlines/20060522-00000019-spnavi_ot-spo.html

ここでの加地の「ボールにいかないで、スペースを埋めるようにして」という言葉。「プレッシング」と「ゾーンディフェンス」の関係について言っていると思うんですが、これについて。まず確認させていただくと、これは両方とも必要なことなのは言うまでもないです。現代サッカーでは中盤からの守備=プレッシングを抜きには語れないですし、ジーコ日本代表でも当然、中盤のプレッシング守備は非常に大切です。ですが、状況によってはプレッシングに行くよりも「スペース=ゾーンを守る」ことが必要であると加地や宮本は言っているわけでしょう。これについてもトルシエ時の「フラットライン」とジーコの「1人余る守備」との対比から考えてみます。

フラットラインシステムの「神髄」は、オフサイドラインをコントロールしながら、最終勝負の瞬間に「自分主体」の判断でラインをブレイクしてマンマークへ移行し、ラストパスやドリブルからのシュートを阻止すること(ボールのないところでの決定的マーキングアクション、そしてドリブル勝負する相手へのアタックなど)。そしてもう一つ、「ブレイク」せずに、自分たちの「背後(=オフサイドポジション)」にいる相手をそのまま残したり、決定的スペースへ走り込む相手を「行かせる」ことで、オフサイドを取ったり、ラストパスを出せないようにしてしまうというギリギリの判断である。
 それを機能させるための生命線は、相手の勝負の仕掛けを「高い確率で読める(予測できる)」ことだ。この「予測」をうまく出来なければ、確実に決定的なピンチに陥ってしまう。だからこそ、中盤選手たちの、「最終勝負の起点」に対する効果的なプレッシャーが重要なファクターになる。それによって、「ラインブレイク」のタイミングを測ったり、逆にラインを「維持」して、背後の相手をそのまま残すとか、相手を「行かせる」という判断もできるわけだ。http://www.yuasakenji-soccer.com/yuasa/html/topic.folder/01_flat_line.html

おなじみ湯浅氏のHPより引用です。ここでは「フラット3」での守備の仕方をまとめられてますで詳細は読んでいただきたいのですが、その中で注目したいのがフラットラインディフェンスでは「中盤の選手たちの効果的なプレッシャー」が重要なファクターであると書かれいるところです。要は、最終ラインが積極的に上がってオフサイドラインをコントロールして守るには、兎にも角にも「中盤のプレス」が必要不可欠であり、それによって最終ラインの対応(オフサイドを狙うか、マンマークで対応するか)が変化するという感じでしょうか。

で、一方、ジーコ日本代表が採用するフラットでない「ゾーンディフェンス」ではどうかと考えてみますと、先程も説明したように「1人余る」が基本なんで、中盤のプレッシングがあるなしにかかわらす、「最終ラインの位置」は自ずと決まってくるわけです。まず、最終ラインがありき! で、その場合の守り方で重要になるのが「最終ラインと中盤の距離=ゾーンを形成する位置」であるということ。

要は「フラットライン」にせよ「1人余る」にせよ、どちらも中盤のMFの選手と最終ラインのDFの選手の距離を「コンパクトにして守る」のがポイントなワケです。で、そのコンパクトを保つためのやり方がフラットラインと1人余る場合では違うと言う事だと思うわけです。

フラットライン:最終ラインの位置は未定=中盤のプレッシングを掛ける位置から逆算して、コンパクトになるように最終ラインを決める!?
(1人余る)ゾーンディフェンス:最終ラインの位置は確定=そのラインに合わせてコンパクトになれるようにするため、中盤はポジションを取る!?

非常に大雑把に書くとこんな感じ? もちろん、フラットラインだって中盤の選手にゾーンの意識は必要ですし、1人余る守備だって「中盤のプレッシング」は必要です。ただ、その優先順位というか意識は2つの守備システムでは違うとでも言いましょうか。で、ジーコ日本代表の場合、前線からのプレッシングは必要ですが、例えば相手にある位置までボールを運ばれてしまったり、こちらが数的不利な状況であったり、どこかに「守備の穴」があいている場合はプレスよりもゾーンを意識して守備する必要があると思うわけです。

要は「プレッシング」と「ゾーンで守る」か判断する能力が必要で、上のスポナビのニュースをそれに照らして考えてみると、中田英はどちらかというと「プレッシング」の意識が高くて、ゾーンの意識が薄いというのを指摘されているということだと思うんですよね(誰に指摘されているかが問題? そんなことはないと思いますが)。

これは「トルシエとジーコの違い」による歪なのか、それとも中田英の「トップ下→ボランチ」というポジションチェンジによる歪なのわかりませんが、私的には加地や宮本が主張する「ゾーンの意識」を中田英がもっと持つ必要があると思う次第です。もっとも中田英の「前線からプレス」はすばらしいものがあると思いますし、インターセプトが狙えるときは積極的に行ってボールを奪って、ゴールを決めてもらいたいという思いも当然あります。要はケースバイケースということがいいいたいわけで。

というわけで、なんか中田英への苦言みたいになってしまいましたが、日本代表であまり長時間プレイできてなくて連携が取れないという現状では、これはしょうがないと思いますし、こういう意見のぶつけ合いはすばらしいことであると思います。もちろん中田英にも「イメージする守備」があると思いますし、たぶん攻撃のことを考えて「リスクを承知のプレス守備」が必要であると考えているのかもしれません。それもわかります。そして、加地、宮本のやり方と中田英のやり方で意見をぶつけ合うことで融合できればすばらしいですし、きっとその「方法」を模索しているんでしょう。ただ現状で現実的な話で言うと、私のような第3者から見てジーコのやり方がうまくいくために適した守備の仕方は加地や宮本が言う「ゾーンディフェンス」であると思うんですよね。まぁ最後はジーコの意向が「その方法論」を決めると思いますが、中田英のイメージも「生かされる」ような守備が出来れば言う事ないんですが…。さて、今回、なぜトルシエの「フラットライン」とジーコの「ゾーンディフェンス」を比較して述べたかと言いますと、どうもジーコの守備は決まりごとがないみたいな風潮が「現時点でまだ」ある気がしたんで(そんなことはない?)そうしました。トルシエの時と比較することでジーコの「守備方法論」が少しでもわかればいいなぁと。まぁこのジーコの「ゾ-ンディフェンス」は非常にオーソドックスで珍しくも何ともないと思うんですが、日本ではそうでもないでしょうかね。チェルシーでモウリーニョが掲げる守備も似たところがあり(違うところもありますが)、私的にはあまり違和感はなんですがね。

■最後に…、中田英がヒデメールで指摘する日本のアドバンテージが生かすためにも!?

ちなみに中田英がHPのヒデメールで鋭い意見を述べてます。日本代表はコンディション的に他国に比べて有利な状況にあり、これがアドバンテージであると。もうその通りだと思いますし、さすが中田英と思ったんですが、運動量とコンディションのアドベンテージを生かすためにもしっかりとした戦略、イメージ、守備組織を作ってもらってオーストラリア戦に臨んでもらいたいですね。
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ジーコの準備―ブラジル代表ワールドカップへの90日